ジャンドが、一強である。


 スタンダード環境にゼンディカーが入って二週間が経ったとはいえ、まだまだ新環境と呼んで差し支えないだろうこの時期にあって、上のような(ある種悲鳴ともとれる)発言を既に幾度となく耳にしている。


 だが、果たしてこれは事実だろうか?


 ジャンドが環境において一番洗練されたデッキというのならば頷ける。というのも、アラーラのブロック構築環境では最強の名をほしいままにしていたシャードである。より研究され、より昇華されていったその蓄積がスタンダードに引き継がれていると思えば、ジャンドがメタゲームのトップに躍り出たのもそう不思議な話ではない。


 しかし、さながらここが終着点であるかのように語ってしまっていいものか。ようやく《苦花/Bitterblossom(MOR)》がローテーション落ちして、「フェアリー最強」の思考停止から脱け出せると思ったら、今度は「ジャンド最強」で思考停止するのか。それはプレイヤーとして間違った姿勢とまでは言えないにしても、デッキビルダーとしては敗北であり、恥である。


 環境初期の流動的なメタゲームにあって、既にメタが固まりきったかのような諦観。無気力。・・・そんな弱い心で、新たな発想が生まれるものか。いや、生まれない(反語)





 さて、いきなりこんな日記を書き出したのにはちゃんと理由があって、つまるところプロツアーオースティンの熱にあてられたのだ。この場を借りて言わせてもらう(借りてないけど)が、ナベとシミチン、本当におめでとう。ナベの準々決勝5戦目の2T目10枚削りでマジで何も落ちなかったときは、見ている人みんなが地団駄踏んで悔しがっていたことだろうと思う。シミチンがMartin Juza相手の5戦目に自分のナルコに暗黒破撃ちだしたあたりも、「こいつは発掘のプロだな」とみんな思ったことだろう。


 あの輝かしい舞台をパソコンの画面ごしに見ながら、しかし俺が考えていたことは、「どうして俺はあの場にいなかったのか」だった。PTQ戦線はおろか草の根からも離脱し、MTGを半ば引退した状態にあって、それでも彼らの活躍は俺の関心を再びMTGに向けるには十分すぎたのだろう。もはや過ぎ去った、叶わぬ夢とはいえ。


 あるいは俺が、プロツアーに出場する時の詩人とリミッツチャンプ(笑)のエクテン調整にわずかながら時間を割いたということもある。新環境のエクステンデッド。当然のごとく全く手探りで何が正解かわからない。だが練習するにつれ環境の輪郭が少しずつ見えてきて、定石に対処する定石を一つずつ作り上げていく、また前の環境から取り戻していく・・・そういった感じは、やはり新しい環境に特有のものだろう。


 残念ながら時の詩人は初日落ち(エクテン4-1、ドラフト0-3!)、リミッツチャンプ(笑)も90位台とふるわなかったようだが、その事実にもまた、「もう少し何か出来なかったのか」と益体ない考えが浮かんでしまうのだ。


 だから同じく新しい環境のスタンダードで、閉塞感に息が詰まっている現状。これを打破することには、オースティンで出来なかったことを今度こそ成し遂げるという意味合いがある。今度こそメタゲームを動かしてやるぞという、意気込みがある。


 そもそも、すべてのプレイヤーは夢見ているはずなのだ。「メタゲームを動かす側に回りたい」と。なればこそ、プレイヤーはオリジナルなデッキを作る。そうして誰かの灯火が、やがてはメタゲームの次なる主役になる。それがこのゲームのシステムなのだ。


 だから、そう、今こそ宣言する。


 俺は。いや俺たちは、ジャンドに屈しない。


 惨劇は回避できる。俺たちは絶対に、たどり着いてみせる。ジャンドの向こう側へと。


 《前振りここまで》






 きっかけは、ジャンド同型のサイド後《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster(ZEN)》だった。


 血編み+廃墟飛ばし+荒廃稲妻。これら大量のアドバンテージカードがジャンド同型の勝負を決定づけるものだとしたら。


 あとは言うまでもない。ジャンドに勝ちたければ、メインに入れてしまえばいいのである。


 『Rgb-Burn』
4《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》
4《地獄火花の精霊/Hellspark Elemental(CON)》
4《地獄の雷/Hell’s Thunder(ALA)》
4《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster(ZEN)》
4《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf(ARB)》
4《稲妻/Lightning Bolt(M10)》
4《噴出の稲妻/Burst Lightning(ZEN)》
4《荒廃稲妻/Blightning(ALA)》
3《焦熱の落下/Fiery Fall(CON)》
2《ボーラスの奴隷/Slave of Bolas(ARB)》
4《野蛮な地/Savage Lands(ALA)》
4《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit(M10)》
4《根縛りの岩山/Rootbound Crag(M10)》
4《山/Mountain(ALA)》
1《森/Forest(ZEN)》
1《沼/Swamp(ZEN)》
1《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs(ZEN)》
4《ぐらつく峰/Teetering Peaks(ZEN)》


 ただジャンドのメインに廃墟飛ばしいれるだけだと芸がないので、ついでにバーンにしてみた。俺はとにかく《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》が使いたいのだ。


 キーパーツは《焦熱の落下/Fiery Fall(CON)》。境界石を入れると血編みでめくれたときにその場で一人回しをやめたくなるくらい不快になるのだが、Vividやフィルターなしで単色タッチ二色を実現するにはこの環境の土地はあまりに心もとない。そこでこのカードはなんと!

・メインカラーからタッチ二色をサーチでき
・2マナ域としてカウントしつつも血編みからめくれることは決してなく
・さらに赤いデッキの致命的な弱点である《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》を葬ることができる


 という良いことづくめな、ソリューションといって差し支えない性能なのである。言い過ぎた。6マナは重いし本体にダメージ入らない上にアドバンテージ取らないとか死んだ方がいいカードなのだが、ここは悪い面には目をつぶっておく。ともあれ・・・


 完璧・・・まさに完璧。そう思われた。早速MWSで一人回しをしてみる。・・・そして、このデッキの重大な欠陥に気づいたのである。


 賢明な読者ならもうおわかりであろう。《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》が1ターン目に出ないのである。冷静に考えてみると一見してこれだけでクソデッキとわかる致命的なコンセプト崩壊・・・紙束・・・




 気を取り直して。


 アンタップ状態の山をたくさん入れるには、血編みか荒廃稲妻か、どちらかを選択しなければならない。断腸の思いで荒廃稲妻には一旦退場してもらい、赤タッチ緑の可能性を模索してみる。


 『Rg-Burn』
4《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》
4《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》
4《ジャンドの斬刃/Jund Hackblade(ARB)》
4《地獄火花の精霊/Hellspark Elemental(CON)》
4《地獄の雷/Hell’s Thunder(ALA)》
4《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf(ARB)》
4《稲妻/Lightning Bolt(M10)》
4《噴出の稲妻/Burst Lightning(ZEN)》
4《暴力的な突発/Violent Outburst(ARB)》
1《焦熱の落下/Fiery Fall(CON)》
4《火荒の境界石/Firewild Borderpost(ARB)》
4《根縛りの岩山/Rootbound Crag(M10)》
1《森/Forest(ZEN)》
10《山/Mountain(ZEN)》
4《ぐらつく峰/Teetering Peaks(ZEN)》


 お前全然コンセプト変わってるじゃねーか。廃墟飛ばしどこいった。ていうか血編みで境界石めくれるぞこれ。


 だって《暴力的な突発/Violent Outburst(ARB)》使ってみたくなったんだもーん。境界石ないと2マナ以下の速攻持ちとかジャンドの斬刃の他にいないし・・・


 悪斬ggになってるあたり救いようがない。





 ここで調整は行き詰まる。やはりジャンドに勝つなど夢物語だったのか。


 ・・・だが待てよ。PTオースティン・・・Martin JuzaとBrian Kiblerは同じくZooに分類されるアーキタイプでありながら全く違うアプローチをとった。片や1マナ域16体のハイパービート。片や《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》から《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》へとつなげるビッグ・ナヤ。そう、この二つを融合させたなら・・・?


 『Landfall-Naya』
4《野生のナカティル/Wild Nacatl(ALA)》
4《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》
4《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx(ZEN)》
4《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》
4《板金鎧の土百足/Plated Geopede(ZEN)》
4《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》
3《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》
4《流刑への道/Path to Exile(CON)》
4《稲妻/Lightning Bolt(M10)》
3《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》
4《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse(M10)》
4《乾燥台地/Arid Mesa(ZEN)》
1《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove(M10)》
1《根縛りの岩山/Rootbound Crag(M10)》
6《森/Forest(ZEN)》
3《平地/Plains(ALA)》
3《山/Mountain(ZEN)》


 Is this a kuso-deck?

 Yes, it is.


 とかいって結構面白い動きするから割と未来があるのかもしれない。ブロック構築さながら《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos(ALA)》とか《ナヤの魔除け/Naya Charm(ALA)》とかカードプールには色々あるし。ジャンドに勝てる気はしないけど。






 そして俺は、ジャンドに勝つことを諦めた。


 ・・・


 俺たちの戦いはこれからだ!(第1部完)


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 Today’s tune

 doriko×リツカ「Mermaid」

http://www.nicovideo.jp/watch/sm8392941

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