スタンダードの使用デッキ候補の1つは、赤単だった。

 イリュージョンの隆盛に鑑みれば当然といえる。現にMO上でもイリュージョンを食うために赤単が増え始めていた。

 トップメタの白系への不利は《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace(NPH)》とその他の構成で対処できる、というのがGP広島で赤単を使用したイカ彦の主張であった。


 『Mono Red』
4《流城の貴族/Stromkirk Noble(ISD)》
3《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》
2《トゲ撃ちの古老/Spikeshot Elder(SOM)》
4《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker(M12)》
4《チャンドラのフェニックス/Chandra’s Phoenix(M12)》
3《はらわた撃ち/Gut Shot(NPH)》
2《四肢切断/Dismember(NPH)》
4《火葬/Incinerate(M12)》
3《電弧の痕跡/Arc Trail(SOM)》
3《電位の負荷/Volt Charge(NPH)》
2《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace(NPH)》
3《槌のコス/Koth of the Hammer(SOM)》
19《山/Mountain(M11)》
4《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus(MBS)》

1《山/Mountain(M11)》
2《オキシド峠の英雄/Hero of Oxid Ridge(MBS)》
3《躁の蛮人/Manic Vandal(M11)》
2《四肢切断/Dismember(NPH)》
4《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage(NPH)》
1《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace(NPH)》
2《転倒の磁石/Tumble Magnet(SOM)》


 しかし。

 俺自身はあくまでもソリューションを追い求めていた。

 そもそも、世界選手権でもMOと同様にイリュージョンが大量発生する保証はない。

 むしろこの暴れっぷりを見れば誰だって、「こんなに流行ってるなら使いたくないな」と思うだろう。

 イリュージョンが既にメタゲームに組み込まれていることは間違いないが、その上でメタゲームがどの段階まで進んでいるのか判断がつかない以上、赤単で出るのはリスクが高いように思われた。

 それでも、自分が使用するデッキとしてイリュージョンを通過したことは既に述べた。《純鋼の聖騎士/Puresteel Paladin(NPH)》デッキも考えたが、純鋼に依存しすぎるデッキ構造が最後まで好きになれなくて没案となった。

 このままなら、赤単か・・・そう消去法でデッキを掴みかけたとき。

 舞い降りてきた。いや、舞い降りてきてしまった。

 白系ビートに有利で、赤単やイリュージョンとも対等に戦えるデッキ。ソリューションの正体は。

 Punk’s Dream。

 そう、《鍛えられた鋼/Tempered Steel(SOM)》だ。

            ◇

 白系ビートとイリュージョンを両方殺せる魔法のデッキ。

 それが今年の日本選手権(http://60486.diarynote.jp/201107221723269456/)でイカ彦に勝利をもたらし、俺に(間違ったデッキ選択で)辛酸を舐めさせたパンクスドリームだった。

 この符号。やはり今年はパンクスに始まりパンクスに終わるのか。

 気づいたときのテンションの上がりようは、それはもう大変に頭の悪いものだったことは言うまでもない。

 ・・・だが、もはや時間がなかった。

 GP広島トップ8レシピをいじくりまわし、一時は『銀弾Punk’s』とかいって1枚差しが10個連なったりもしたが、最終的にはまた元の形に戻ってきてしまうのだった。


 『Punk’s Dream』
4《メムナイト/Memnite(SOM)》
4《信号の邪魔者/Signal Pest(MBS)》
4《大霊堂のスカージ/Vault Skirge(NPH)》
4《きらめく鷹/Glint Hawk(SOM)》
4《きらめく鷹の偶像/Glint Hawk Idol(SOM)》
2《脊柱の飛行機械/Spined Thopter(NPH)》
3《呪文滑り/Spellskite(NPH)》
4《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》
4《急送/Dispatch(NPH)》
4《鍛えられた鋼/Tempered Steel(SOM)》
4《オパールのモックス/Mox Opal(SOM)》
4《金属海の沿岸/Seachrome Coast(SOM)》
8《平地/Plains(M11)》
4《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus(MBS)》
3《激戦の戦域/Contested War Zone(MBS)》

3《忠実な軍勢の祭殿/Shrine of Loyal Legions(NPH)》
3《刃砦の英雄/Hero of Bladehold(MBS)》
2《四肢切断/Dismember(NPH)》
2《忘却の輪/Oblivion Ring(M12)》
2《存在の破棄/Revoke Existence(SOM)》
2《天界の粛清/Celestial Purge(M11)》
1《戦慄の感覚/Feeling of Dread(ISD)》


 本戦で使用したデッキである。

 もちろん、今回のデッキ選択をもって我々『神様へのブラフ』がChannel Fireballに追いついた、などと言うつもりは毛頭ない。

 Channelの鋼を100点とするなら、俺が使ったこれは30点。いや25点の鋼だっただろう。

 それくらいの差がある。

 我々はただ『環境的に鋼が強い』というフレームを理解していただけにすぎない。Channelはそれを『メインに《刻まれた勇者/Etched Champion(SOM)》を入れる』という具体的な形にしてみせたのであり、その英断をもってこそはじめて正当化される選択だったのだ。

 つまり、結果から言えば。

 今回の俺のスタンダードのデッキ選択は誤りだった。

 フレームに囚われ、時間のなさを言い訳にしてデッキの完成度を疎かにしたこと。それが敗着だ。

 大人しく完成度の高い赤単を使っていれば。

 ・・・とはいえ、それも猫箱の中のこと。

 このときの俺は例によって、自分が圧倒的に18-0するヴィジョンを抱えて飛行機の中でも一人回しに余念がなかった。

 赤単は日本に置いてきた。迷いは後悔を生む、それを日本選手権で学んだ。そして。

 11月15日火曜日。サンフランシスコ国際空港。

 決戦の地へと、俺は降り立った。

            ◇

 ホテルは例によってなかしゅーさんの手配。ホテルまでのタクシーの分かれ方でAA・あくあ・kukeke部屋と、俺・地雷王・YMS(≒最強)部屋という部屋割りになった。

 どうでもいいことだが、この同室したYMSという人物が(良い意味で)なかなか面白いキャラクタの持ち主で、この1週間ほどの旅行の間、こちらも初対面の地雷王さんと2人でかなり笑わせてもらった。

 彼の残した名言の数々・・・は(危険すぎて)ここに書くことができないが、代わりに彼の参加レポートへのリンクを置いておこう。

http://hasukora.diarynote.jp/201111240039122574/
http://hasukora.diarynote.jp/201111250054186780/

 彼のおかげでこの旅がいつもより楽しいものになった。とても感謝している。

 遠く離れた地の全く知らないMTGプレーヤーと仲良くなれるというのもまた、プロツアーの魅力と言えるだろう。

            ◇

 一晩寝て、初日の前日15時頃にレジストのために会場へ。でもレジスト全然始まらないっぽいのでウメ様とサイドイベントドラフトに参加。

 今まで全くやったことがなかった両面カードのインディアンポーカースタイルに慣れるため、という口実もある。

 上家にウメ様。

1-1 《災火のドラゴン/Balefire Dragon(ISD)》流して何か。あと覚えてないので略。

1《スカースダグの信者/Skirsdag Cultist(ISD)》
1《月鷺/Moon Heron(ISD)》
2《その場しのぎのやっかいもの/Makeshift Mauler(ISD)》
2《礼儀正しい識者/Civilized Scholar(ISD)》
1《ランタンの霊魂/Lantern Spirit(ISD)》
1(昼)《ハンウィアーの砦守り/Hanweir Watchkeep(ISD)》
1《セルホフの密教信者/Selhoff Occultist(ISD)》
1《交差路の吸血鬼/Crossway Vampire(ISD)》
1《ケッシグの狼/Kessig Wolf(ISD)》
2《灰口の猟犬/Ashmouth Hound(ISD)》
2《村の鉄鍛冶/Village Ironsmith(ISD)》
1《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets(ISD)》
1《禁忌の錬金術/Forbidden Alchemy(ISD)》
1《恐るべき妄想/Frightful Delusion(ISD)》
1《捨て身の狂乱/Desperate Ravings(ISD)》
1《夜鳥の手中/Nightbird’s Clutches(ISD)》
2《収穫の火/Harvest Pyre(ISD)》
2《霊炎/Geistflame(ISD)》
9《島/Island(M11)》
7《山/Mountain(M11)》

 下家がドラゴンから赤行ったっぽくて返しがうまくなかった。あと上家のウメ様が卓1の緑やっててキレそう。

第一回戦 VS?
相手来なくてBye。

第二回戦 VS白黒タッチ赤
一戦目 いっぱい除去られたけど《その場しのぎのやっかいもの/Makeshift Mauler(ISD)》が無双して《夜鳥の手中/Nightbird’s Clutches(ISD)》で押し込んで勝ち。
二戦目 後手土地2キープで土地詰まって負け。
三戦目 《ファルケンラスの貴族/Falkenrath Noble(ISD)》をフラッシュバックリアニで使いまわされて除去りきれなくて勝ち手段もなくて負け。
○××

 2没。まあ赤は被ったらきついわな。

            ◇

 そして世界選手権初日を迎えた。

 事前の準備、物語の蓄積は十分。

 たとえ世界を敵に回しても怖気づくことはない。

 低調な日本勢がどうだ、世界選手権のシステム変更がどうだといった大きな物語も消し飛んだ。

 何せこれから飛び込もうとしているのは。

 戦だ。祭りだ。

 誰に気兼ねする必要もなく。

 ただ自分のことだけを考え、自分のために勝てばいい。

 だから主人公は俺だ。ヤソでもなかしゅーでもChannel勢の誰でもない。

 そう、ここが本気の瞬間。口に出す夢はNo.1。

 you ready?

 参加者375名、初日スタンダード6回戦。

 6-0まで、駆け抜ける!!

            ◇

第一回戦 VS Ryoichi, Tamada(青単イリュージョン)
一戦目 《はらわた撃ち/Gut Shot(NPH)》《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》で《鍛えられた鋼/Tempered Steel(SOM)》置く前に場が壊滅して負け。
二戦目 いいとこで《四肢切断/Dismember(NPH)》持たれてて攻めきれず《ムーアランドの憑依地/Moorland Haunt(ISD)》まわりだして負け。
××

第二回戦 VS Alfredo, Domingoez Roldan(赤黒青テゼレット)
一戦目 いっぱい除去撃たれるも相手が土地祭りでフィニッシャー引かれてなくて勝ち。
二戦目 あんまライフ削れてない状態で《迫撃鞘/Mortarpod(MBS)》《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace(NPH)》とかいう盤面になっちゃって負け。
三戦目 《鍛えられた鋼/Tempered Steel(SOM)》→《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus(MBS)》→《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus(MBS)》とトップできて毒殺。
○×○

第三回戦 VS Frank, Karsten(赤単)
一戦目 相手先手、こっちは7枚平地平地鋼でキープしたのに3枚目引けなくて鋼置くの遅れて負け。
二戦目 相手ドブンでこっちドロー全部ランドで白英雄出すも間に合わなくて負け。
××

第四回戦 VS Ryouta, Endou(緑タッチ赤ケッシグ)
一戦目 土地1鋼キープしたら全然土地引けなくて《内にいる獣/Beast Within(NPH)》で唯一の土地も割られてほぼマグロ状態。でも相手が攻め急いだおかげで差しきるチャンスが生まれ、そのタイミングできちんと《平地/Plains(M11)》引けてブロッカー《急送/Dispatch(NPH)》でタップしつつの《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》×2でぴったり勝ち。
二戦目 ぶん回って鋼置いて勝ち。
○○

第五回戦 VS Gui, Medeiros Merjan(青単イリュージョン)
一戦目 10ターン以上かけて《急送/Dispatch(NPH)》と《鍛えられた鋼/Tempered Steel(SOM)》の1枚も引けず、《大霊堂のスカージ/Vault Skirge(NPH)》コピーにじわじわ削られて《ムーアランドの憑依地/Moorland Haunt(ISD)》で負け。
二戦目 先手ダブマリで相手ドブンでまあ負け。
××

第六回戦 VS Tom, Raney(緑白)
一戦目 普通に飛行ビートで勝ち。
二戦目 《審判の日/Day of Judgment(M11)》食らったらケアしてたのにドロー土地多すぎて金属術達成できなくて、《刃砦の英雄/Hero of Bladehold(MBS)》《急送/Dispatch(NPH)》できなくて負け。
三戦目 《鍛えられた鋼/Tempered Steel(SOM)》貼って《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus(MBS)》2枚で勝ち。
○×○

            ◇

 ・・・というわけで初日は命からがらの3-3。

 途中で何度もこのデッキ選択を後悔した。

 思ったよりイリュージョンがたくさんいて、白青人間がほとんどいなかったというメタの読み違えもあったが、それにしたってイリュージョンに2回も負けるとか何しに来たんだって感じ。

 敗因は、前述のようにデッキの完成度の低さにある。

 軽量除去が蔓延する環境で《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》は蛮勇過ぎた。

 だが、心折れる暇もなく本戦は続いていく。

 2日目、ドラフトラウンドへ。

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 Today’s tune

 巡音ルカ「+ID」

http://www.nicovideo.jp/watch/sm16141734

コメント

YMS
2011年11月27日21:24

この度は本当にお世話になりました!
たしかに危険なものも含まれていた気がするので英断と言わざるを得ませんねw

D
2011年11月28日3:30

続き早よ!

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