PTQフィラデルフィア@横浜
2011年7月31日 映画 コメント (17)夏が終わる。
7月31日が、やってくる。
もちろん多くの日本人にとってはまだまだ暑い季節が続くのだろう。何せ8月はまだ丸々残っているのだから。
だが、いくら暑かろうと。その8月にPTQフィラデルフィアは、もはや存在しないのだ。
だからプロツアーに焦がれる者たちにとっては、この日が夏の終わりで。
そして熱さのピークなのだ。
◇
その最後の戦いに持ち込んだ相棒は、前の日記で既に紹介の通り『No.1』だ。
日本選手権で俺に1-3というクズ成績を味合わせたこのデッキが、「しかし今のメタゲームならば通用する」と言って、いったい誰が信じるというのか。
そう・・・「またいつものクソデッキ病が始まったよ」と思われるだけかもしれない。クソデッキ&ゴミピックはこの『だらだらMTG』の華だからだ。
だが、あいにく本気だ。
今なら。Caw-Blade、双子、ヴァラクート、鋼、緑白、青黒など一線級のデッキが出揃い混沌となったメタゲームを前にして、赤単が沈んだ今ならば。
赤へのマークは薄い。ましてゴブリンなど一笑に付すべき路傍の石とでも思われている。だからこそ、好都合。
つまり、ようやく俺が日本選手権当時に想定していたメタゲームになったのだ。
このデッキは生まれるのが2週間早かった。ただそれだけのことだ。
『No.1』
4《メムナイト/Memnite(SOM)》
4《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》
4《ゴブリンの付け火屋/Goblin Arsonist(M12)》
4《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》
4《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》
4《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
4《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》
4《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》
4《稲妻/Lightning Bolt(M11)》
4《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
4《ぐらつく峰/Teetering Peaks(ZEN)》
4《乾燥台地/Arid Mesa(ZEN)》
4《沸騰する小湖/Scalding Tarn(ZEN)》
8《山/Mountain(M12)》
4《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker(M12)》
4《四肢切断/Dismember(NPH)》
4《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》
3《反逆の印/Mark of Mutiny(ZEN)》
このデッキはメインボードだけなら驚異的な勝率を誇る。
やはり課題はサイドボード後なのだ。メインで勝っても後手の二本目をほぼ必ず落としてしまうようでは、サイドした三本目が残ってしまいたとえ先手でも勝率は著しく下がるだろう。
後手の二本目をとれるようにするために、先手後手を入れ替える(可能性がある)カードだけをチョイスしたのがこのサイドボードだ。
ちなみに《機を見た援軍/Timely Reinforcements(M12)》はこちらが何を積んでも不利は覆せないので、「当たらない」もしくは「引かれない」で開き直ることにした。《オキシド峠の英雄/Hero of Oxid Ridge(MBS)》を積むにはこのデッキの土地は少なすぎるし、本当にそれだけのためにスロットを割くのは一発勝負のPTQでは割りに合わない。
何より、撃たれると思うのなら、そもそもこんなデッキを使わない。
俺は撃たれない方にAll-inしたのだ。その覚悟があってこその殺意。
この選択が、吉と出るか凶と出るか。
◇
子供の頃は、地元のサッカーのクラブも、習い事のピアノも、部活のバスケも、長くは続かなかった。
そんな俺にも、10年続く趣味ができた。
負けることが嫌で闘うことから逃げ続けてきた俺だが、今こうして真剣勝負の舞台に足を運んでいる。
この場所なら、戦える。
このゲームの中でなら、俺は「何者か」になれる。
そう思わせてくれるのが、マジックなのだ。
プロツアーへの門は決して広くはない。
PTQを連戦することは長く苦しい道のりになるし、決勝トーナメントで2没や3没したときの徒労感は「もうこんなゲームやめよう」と思ってしまうくらいだ。
仮に抜けても0回戦(リアルの都合)で勝てない人もいるだろう。
だが、それでも。意欲することを、挑戦することを、どうして諦められよう。
だからこそここに来た。心は充足を求めている。そして、この渇きを癒せるのは勝利の美酒のみ。
故に。
参加者70名、スイスドロー7回戦。
7-0まで駆け抜ける!!
◇
第一回戦 VS No.1同型(タルさん)
一戦目 後手。T3デバステコンボされるも相手が4枚目の土地を一向に引けなくて土地0から復帰できず、後詰めがなくて勝ち。
In
4《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker(M12)》
4《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》
Out
4《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
4《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
二戦目 T4デバステコンボで物理的に負け。
三戦目 こっちがT3デバステコンボ決めて勝ち。クソゲーすぎるwww
○×○
第二回戦 VS 青黒コン
一戦目 後手。《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek(ROE)》で抜かれなかった《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》を2ターン目にぶっぱしたら捌かれなくて勝ち。
In
3《反逆の印/Mark of Mutiny(ZEN)》
Out
2《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》
1《メムナイト/Memnite(SOM)》
二戦目 生物捌かれまくったけど相手6マナ圏引いてなくて、おもむろにトップした《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》をX=5で撃って相手対処できず勝ち。
○○
第三回戦 VS 赤単ゴブリン
一戦目 後手。相手がガン攻めできたので《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》でカウンターパンチを入れ、さらに次ターンにデバステコンボ決めて勝ち。
In
4《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker(M12)》
4《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》
Out
4《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
4《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
二戦目 《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》3枚引いてテンポとりまくって勝ち。
○○
第四回戦 VS 白単鋼
一戦目 後手。《鋼の監視者/Steel Overseer(M11)》除去れなくてぶち切れ奇襲隊もライフが詰めきれない。なんとか《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》の射程圏には落とし込むが引けずに負け。
In
4《四肢切断/Dismember(NPH)》
Out
2《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》
1《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
1《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》
二戦目 相手白マナなしキープで3ターン目に《呪文滑り/Spellskite(NPH)》を《四肢切断/Dismember(NPH)》しつつ《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》走って《激戦の戦域/Contested War Zone(MBS)》パクったらそのまま勝ち。
In
1《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》
1《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
Out
1《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
1《メムナイト/Memnite(SOM)》
三戦目 相手ワンマリ後事故って、こっちも土地多めの除去キープだったけどドローかみ合って勝ち。
×○○
第五回戦 VS 青赤双子(ブラマス)
一戦目 後手ワンマリ。2ターン目までに1マナ3体展開したら返しでメイン《紅蓮地獄/Pyroclasm(M11)》食らってgg。
In
4《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker(M12)》
4《四肢切断/Dismember(NPH)》
4《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》(先手は《紅蓮地獄/Pyroclasm(M11)》ケア)
Out
4《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
4《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
4《稲妻/Lightning Bolt(M11)》
二戦目 ワンマリだけどT2《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker(M12)》。返しでパイロ食らうも相手が土地しか引いてなくて勝ち。
In
4《稲妻/Lightning Bolt(M11)》
3《反逆の印/Mark of Mutiny(ZEN)》
Out
4《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》(後手は《呪文滑り/Spellskite(NPH)》ケア)
2《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》
1《メムナイト/Memnite(SOM)》
三戦目 《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker(M12)》に《乱動への突入/Into the Roil(ZEN)》使わせてからのT4デバステコンボX=3で10点もぎとり、相手も赤マナ待ちだったが引けずにこっちが先に土地引いて、フェッチで減った分と合わせて本体《稲妻/Lightning Bolt(M11)》で勝ち。
×○○
第六回戦 VS Caw-Blade
全勝二人だけだったのでID。
--
第七回戦 VS 緑白(cramcram)
相手は5-1でIDして抜け確なのでID。
--
◇
5-0-2でスイス1位通過。「これは流れが来てるな」と2-0したあたりで思ってた。
デッキ分布は、上から
No.1(俺)
Caw-Blade(6回戦の相手)
青赤双子(ブラマス)
緑白(cramcram)
青赤双子(シノザキさん)
緑タッチ赤ビッグマナ
ぱうグリーン(アクアミーバさん)
青赤昇天(あっきー)
カウブレだけきつくて、あとはなんとかなりそうな感じ。
◇
準々決勝 VS 青赤昇天(あっきー)
一戦目 先手。相手ワンマリでもT2《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》に即除去撃たれてちょっとげんなりするも、めげずに展開し続けたら相手は火力で適宜除去ってはくるものの《紅蓮術士の昇天/Pyromancer Ascension(ZEN)》にたどり着けてなくて、結局脇からちまちま削れていったダメージで勝ち。
In
4《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker(M12)》
4《四肢切断/Dismember(NPH)》(相手のサイド双子プランを知っていたので)
4《変異原性の成長/Mutagenic Growth(NPH)》
Out
4《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
4《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
4《稲妻/Lightning Bolt(M11)》
二戦目 相手土地多めに引いて、《紅蓮術士の昇天/Pyromancer Ascension(ZEN)》は置くもののドロースペルがなくクエスト達成できない。こっちが先に《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》X=4をプレイし、返しでようやく昇天するもののライフが詰まっており、ブロッカーの《詐欺師の総督/Deceiver Exarch(NPH)》を《四肢切断/Dismember(NPH)》できたこともあってそのまま勝ち。
○○
準決勝 VS 緑白(cramcram)
一戦目 先手。こっちドブンで相手マリガンから3ターンの間マグロだったので勝ち。
In
4《四肢切断/Dismember(NPH)》
3《反逆の印/Mark of Mutiny(ZEN)》
Out
4《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》
2《メムナイト/Memnite(SOM)》
1《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
二戦目 相手は《戦隊の鷹/Squadron Hawk(M11)》も《機を見た援軍/Timely Reinforcements(M12)》も引いてなくて、動きがちょっとチグハグ。こっちも土地1枚で詰まってたので《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker(M11)》は《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》で処理し、《刃砦の英雄/Hero of Bladehold(MBS)》にだけ《四肢切断/Dismember(NPH)》合わせて、《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》キッカーで8点ぶち込む。2体目のガラクがトークンを生み出した返しで《反逆の印/Mark of Mutiny(ZEN)》でトークンパクって《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》の喊声でさらにライフを詰め、後詰めで《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》出したら勝ち。
○○
◇
物語を紡ぐこととデュエルをすることが同じだとするならば。俺は決勝戦というものをもう何度も経験していることになる。
世界選手権2010。PWC Championship2011。プロツアー名古屋。いずれも決勝のカバレッジは俺が書いた。つまり俺もそこでデュエルをしていたといえる。
だが、プレイヤーとしての俺は現実にはPTQで毎回のように1-2する程度の実力しかない。
何度か出たことがあるプロツアーも、毎回のようにボコボコにされた。
だから、今日久しぶりに「決勝」のテーブルに座ったとき。やはり物語とは別物だと思った。
何故って、俺はこう思っていたからだ。
あと一回だ。勝つ。何があっても勝つ。目の前のやつを倒して、俺がNo.1になる。プロツアーの権利がどうとかは関係ない。ただ頂点に立ちたい。だから冷静になれ。そして勝て。行くぞ。行くぞ。行くぞ!!
純粋な勝利への希求。それも観戦者が絶対に共有できないレベルの純粋さだ。
何故なら、プレイヤーにはそれぞれ今日ここまでの小さな歴史がある。スイスラウンドを戦い、決勝トーナメントを勝ち抜き、そうして少しずつ積みあがっていった思い。
そのテンションは、やはり俺だけのものだからだ。
だから。ああ、神様。
俺はあんたを信じない。祈ると見せかけて罵倒しよう。縋るように思わせて転ばせよう。
そうして敗北の運命を思いの力だけで捻じ曲げて見せよう。
神様へのブラフで。
◇
決勝 VS 緑タッチ赤ビッグマナ
一戦目 後手。相手のT1《極楽鳥/Birds of Paradise(M12)》を2ターン放置して《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》→《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》→《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》+ようやく鳥にラヴァマンサ能力起動という後手なのに最大打点のゆとりプラン。だが相手は3ターン目に5マナフルオープンでターンを返すようなハンドだったのでこれが間に合って、4ターン目《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker(M11)》でトークンゴーの返しで《稲妻/Lightning Bolt(M11)》+《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》+《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》でパワー4が5体アタックして勝ち。
In
4《四肢切断/Dismember(NPH)》
Out
1《メムナイト/Memnite(SOM)》
1《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》
1《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
1《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
二戦目 お互いワンマリ。《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》が相手に土地を供給しまくり、《強情なベイロス/Obstinate Baloth(M11)》連打されて、《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(M12)》と《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》でまったりしつつ隙を見てデバステコンボ決めるプランかなーと思ってたら《召喚の罠/Summoning Trap(ZEN)》から《テラストドン/Terastodon(WWK)》出てきて自分の土地3枚割って一気に盤面がクライマックスになって本体遠すぎて負け。
In
1《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》
1《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
Out
2《ゴブリンの付け火屋/Goblin Arsonist(M12)》
三戦目 全力《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》の返しの《強情なベイロス/Obstinate Baloth(M11)》を虎の子の《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》で除去ってクロックを継続するも、2体の《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》で《緑の太陽の頂点/Green Sun’s Zenith(MBS)》がめくれてしまう。即座に2体目のベイロスが出てくる。こちらの手札はゼロ・・・だが返しのドローは値千金の《四肢切断/Dismember(NPH)》!!これでクロックを継続できて、相手もマナクリのチャンプブロックと《惑いの迷路/Mystifying Maze(M11)》で粘るも、さらに最後に3体目の《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》をトップして勝ち。
○×○
◇
というわけでPTQ抜けてPTフィラデルフィアの権利と航空券を獲得しました。
PTQ抜けは実に3年ぶり(前回はhttp://60486.diarynote.jp/200808182326310000/)。
もう縁はないだろうなと思っていたから、本当に嬉しい。
この最強デッキを開発したタルさんに礼を。そしてナベ、俺たちの敗北は無駄ではなかった。
最後に、ここまで読んでくれたあなたに、この言葉を贈ろう。
「俺たちが、No.1。」
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Today’s tune
UVERworld「No.1」
コメント
改めて、おめでとう
頑張ってきてくれー
僕に出来る事は感動する事くらいしかないけど、それでも感動しました。
勝って、物語にしてくれてありがとうございます。
本戦でもNo.1だ!
長いとレポートがすぐ終わるというお約束が覆されたときの嬉しさは何よりです。
本戦でもご活躍を祈っております。
PT頑張ってください!
普通の小説を読んでも、この高揚感はなかなか味わえないですね。
本戦も応援してます。
本選も頑張ってください!!
まつがんさんの夏はまだ終わらない!