日本選手権2011

　俺たちがNo.1。

　今回の『神様へのブラフ』のテーマだ。

　UVERworld『No.1』を口ずさみながらSkypeで話し合ったり、「行け、俺たちのpunks’ dream！」と叫びながら《鍛えられた鋼/Tempered Steel(SOM)》を置いてアタックしたりした。

　すべては、日本選手権でNo.1となるために。

　始まりは2週間前。新宿のカラオケ館でのpunks’ dreamの誓い・・・

　それからはらっしゅのMO調整とイカ彦の現実調整、俺の脳内調整が三位一体となり、次々とアイディアを試しては挫折する日々。

　無数のレシピを通過した。

　そしてたどり着いたのだ。最強の75枚に。

　『TSPD』
４《メムナイト/Memnite(SOM)》
４《信号の邪魔者/Signal Pest(MBS)》
４《大霊堂のスカージ/Vault Skirge(NPH)》
３《起源の呪文爆弾/Origin Spellbomb(SOM)》
４《鋼の監視者/Steel Overseer(M11)》
４《きらめく鷹の偶像/Glint Hawk Idol(SOM)》
４《呪文滑り/Spellskite(NPH)》
１《刃砦の英雄/Hero of Bladehold(MBS)》
２《定業/Preordain(M11)》
４《急送/Dispatch(NPH)》
４《鍛えられた鋼/Tempered Steel(SOM)》
３《オパールのモックス/Mox Opal(SOM)》
４《金属海の沿岸/Seachrome Coast(SOM)》
４《氷河の城砦/Glacial Fortress(M11)》
４《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus(MBS)》
７《平地/Plains(M12)》

２《刃砦の英雄/Hero of Bladehold(MBS)》
２《激戦の戦域/Contested War Zone(MBS)》
４《統一された意思/Unified Will(ROE)》
３《天界の粛清/Celestial Purge(M11)》
２《屈折の罠/Refraction Trap(WWK)》
２《存在の破棄/Revoke Existence(SOM)》

　そう、Tempered Steel Punks’ Dream。この符号・・・そして精緻なバランスを見よ。

　とはいえらっしゅが悪目立ちしすぎたのか、既に一週間前には（M12対応前とはいえ）MO上で爆発的に増加してしまったという不運と、2日前のmtg-jp.comの津村記事の更新により白単鋼のMO上での隆盛が周知の事実となってしまうというアクシデントもあった。

　それでも、2週間にわたる調整を考えれば、今更デッキを乗り換えるのは経験値の面で非効率だった。

　何よりこのTSPDをもってすれば、いかなる逆境も跳ね返せる（あと現実に《忍び寄る腐食/Creeping Corrosion(MBS)》まで積むやつがそこまでいるとは思えない）。そう信じられた。それほどの強さだったのだ。

　あとはM12によってどこまでメタゲームが動くか・・・それだけだった。

　「一週間前ならパーフェクトな選択だった」そんな若干の不安を伴ったこの自信作を持って。

　俺は夜行バスに乗り込んだ。

　　　　　　　　　　　　◇

　しかし、事件は起こった。

　それは日本選手権前日のこと。

　前日予選真っ最中の会場で出会ったとある人物・・・ここでは仮にT氏とでもしておこう。その赤単マイスターのTゲンキ氏が、とんでもないデッキを開発していたのだ。

　言うまでもなく赤単。けれども、これまで見たどんな赤単より、M12を使いこなしているように見えた。

　『No.1』
４《メムナイト/Memnite(SOM)》
４《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》
４《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer(TOR)》
４《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》
４《ゴブリンの付け火屋/Goblin Arsonist(ROE)》
４《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver(MBS)》
４《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》
４《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》
４《稲妻/Lightning Bolt(M11)》
４《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade(M12)》
４《ぐらつく峰/Teetering Peaks(ZEN)》
４《乾燥台地/Arid Mesa(ZEN)》
４《沸騰する小湖/Scalding Tarn(ZEN)》
８《山/Mountain(M12)》

２《オキシド峠の英雄/Hero of Oxid Ridge(MBS)》
２《激戦の戦域/Contested War Zone(MBS)》
２《粉砕/Shatter(SOM)》
２《反逆の印/Mark of Mutiny(ZEN)》
３《二股の稲妻/Forked Bolt(ROE)》
４《四肢切断/Dismember(NPH)》

　一見して溢れるネタ臭。それでも、このデッキはヴァラクートを幾度となく粉砕してみせた。

　そして驚くべきことにそのパフォーマンスは、たとえサイドボード後であっても変わることはなかったのだ！！

　まさかソリューション・・・？鋼デッキへの風当たりが強くなるであろう本戦、そこにこの『切り札』的赤単で駆け抜けるという明確なヴィジョンが見える。留まるところを知らない妄想に上がっていくテンション。

　そしてついにあのプロプレイヤー・ナベが決断した。「俺はこれで出るよ」と。

　この流れに乗り遅れるわけにはいかない。そう考えた俺は赤単用のカードをブラマスから借り、足りないカードはバイヤーブースで買い足して、一応この『No.1』でも出られるよう75枚を揃えた上でホテルへと撤収した。

　ホテルの部屋に戻った俺は、一人回しをしながら考える。これは天啓か、それとも罠か・・・

　それを事前に見定める方法はない。だが、この選択で確実に世界線が変わる。

　しかしこの《メムナイト/Memnite(SOM)》はどこかで見たような・・・はっ！

　これはまさしく『All in One』（※）ではないか！！
（※参照：http://60486.diarynote.jp/201101170043397232/）

　久方ぶりの魂の共鳴に高揚した俺の両手は、超高速のシャッフルと一人回しを繰り返した。

　そして気がつけばデッキリストには、「4 Goblin Guide」から始まる文字が連なっていた・・・

　　　　　　　　　　　　◇

　翌朝。

　『No.1』で出るという決意の揺るがないナベを見て、しかし俺はいまだに迷っていた。

　当然『TSPD』で出る予定のイカ彦に事の顛末を告げたが、「真面目な話、みんな冷静になった方がいいと思うよ。」という冷たい反応。

　それはそうだろう。何せ『TSPD』は我々『神様へのブラフ』が2週間をかけて熟成させた終着点であり、詳細なマッチアップ分析と綿密なインアウト検討がなされているのだ。

　対する『No.1』はいかに新しいカードを多く使っていて魅力的に見えるとはいえ、所詮は前日出会っただけの一夜漬けデッキ。どちらが冷静な選択か、火を見るより明らかだ。

　それでも、『TSPD』か『No.1』か・・・俺はデッキリストの提出を迫られる9時20分ギリギリまで葛藤した。

　そして俺の選択は・・・

　参加者347名、スイスドロー7回戦。

　７－０まで駆け抜ける！！

　　　　　　　　　　　　◇

第一回戦　ＶＳ 赤単
一戦目　先手3ターン目デバステ奇襲隊決めて勝ち。
二戦目　相手ワンマリだけど《漸増爆弾/Ratchet Bomb(SOM)》で牽制されつつ火力で捌かれ、《ヴァルショクの難民/Vulshok Refugee(NPH)》も出てきて負け。
三戦目　火力連打で捌かれつつ《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》だけ引けば勝ちの状況を作ったけど引けずに負け。
○××


第二回戦　ＶＳ 青白コン（シミチン）
一戦目　《広がりゆく海/Spreading Seas(ZEN)》のせいでデバステコンボできず、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren(M11)》殺したら裏目って1点足りずに負け。
二戦目　《神聖の力線/Leyline of Sanctity(M11)》→《機を見た援軍/Timely Reinforcements(M12)》→《審判の日/Day of Judgment(M12)》で負け。
××


第三回戦　ＶＳ ヴァラクート
一戦目　メインで《紅蓮地獄/Pyroclasm(M11)》撃たれて負け。
二戦目　3ターン目デバステコンボで勝ち。
三戦目　またパイロ食らってグレネードトップ条件を引けずに負け。
×○×


第四回戦　ＶＳ 青黒コン
一戦目　4ターン目に12点叩き込んで勝ち。
二戦目　全部捌かれて負け。
三戦目　2ターン目《壊滅的な召喚/Devastating Summons(ROE)》ぶっぱして捌かれずに勝ち。
○×○


　スタン１－３でドラフトへ。上家にあじわいさん、下家にハギ。

１－１　《凄腕の暗殺者/Royal Assassin(M12)》流して《先兵の精鋭/Elite Vanguard(M12)》
１－２　《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus(M12)》
１－３　《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus(M12)》《鎧の軍馬/Armored Warhorse(M12)》流して《先兵の精鋭/Elite Vanguard(M12)》
１－４　《グリフィンの乗り手/Griffin Rider(M12)》
１－５　《ゴブリンの投火師/Goblin Fireslinger(M12)》

　でその後白が枯れて上家は青赤気配、途中で白が枯れたから上上家が白やってんのかなってところ。卓で空いてるのは黒と緑だけど黒は下に譲ったから二色目は緑かなーという感じ。でも2パック目で下家のハギが白始めちゃってゴミピックしかできず、3パック目も白の流れ悪くてゴミが爆誕した。


１《グリフィンの歩哨/Griffin Sentinel(M12)》
１《隠れ潜む鰐/Lurking Crocodile(M12)》
２《聖なる狼/Sacred Wolf(M12)》
１《斑の猪/Brindle Boar(M12)》
１《翡翠の魔道士/Jade Mage(M12)》
３《グリフィンの乗り手/Griffin Rider(M12)》
１《鎧の軍馬/Armored Warhorse(M12)》
１《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus(M12)》
３《先兵の精鋭/Elite Vanguard(M12)》
１《ギデオンの法の番人/Gideon’s Lawkeeper(M12)》
３《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves(M12)》
１《トロール皮/Trollhide(M12)》
４《剛力化/Titanic Growth(M12)》
１《歯止め/Stave Off(M12)》
１《啓蒙/Demystify(M12)》
８《平地/Plains(M12)》
７《森/Forest(M12)》

　こりゃ０－３するわ、と組んだ瞬間に思った。


第五回戦　ＶＳ 赤黒
一戦目　ライフ押されるも相手が土地ばっか引いてて《聖なる狼/Sacred Wolf(M12)》＋《トロール皮/Trollhide(M12)》だけで盛り返して勝ち。
二戦目　《反逆の行動/Act of Treason(M12)》＋《投げ飛ばし/Fling(STH)》でシャクられて負け。
三戦目　ていうかデッキ弱すぎて負け。
○××


第六回戦　ＶＳ 白黒（ハギ）
一戦目　先手平地森《グリフィンの乗り手/Griffin Rider(M12)》《グリフィンの歩哨/Griffin Sentinel(M12)》でキープしたら永久に土地が2枚で詰まって負け。
二戦目　普通に負け。
××


第七回戦　ＶＳ 赤黒
一戦目　ダメージレースで負け。
二戦目　《チャンドラの憤慨/Chandra’s Outrage(M12)》きつくて《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire(M12)》にぼこぼこ殴られて負け。
××

　　　　　　　　　　　　◇

　１－６（笑）。PTホノルル以来のゴミクズ成績をたたき出してしまった。

　ここまでくると2ndドラフトとかどうせ取りきりなので即ドロップして二日目と三日目はライターやらせてもらってました。

　イカ彦が4位だったので『神様へのブラフ』の調整としては成功だったのだけれど、俺個人としては心の弱さが出てしまった形。前々日の津村記事を受けてもう少しメタが回って白鋼への風当たりが強くなると予想していたけど、思ったより断然赤単メタの方が強かった。『No.1』のデッキとしての強さはともかく、このタイミングで使うべきデッキではなかった。

　現に、4人いたこのタル赤単の使用者は、2-2（ナベ）、1-3（俺）、1-3、1-3と揃って討ち死にしている。また神への感謝か。

　そう・・・失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した俺は失敗した(ry

　前日にデッキリストにすでに記入してしまっていたのが敗因だったのかもしれない。

　リストに『No.1』が記入してある時点で、それは既に公平な選択ではなかった。デッキを変えるなら、新しいデッキリストをもらって書き直す必要があるからだ。

　『TSPD』を使った世界線に移動できたら・・・あるいは俺がNo.1になれたかもしれない。

　だが、それは言っても詮無いことだ。

　こうして、俺の初めての日本選手権は幕を閉じたのだった。

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　Today’s tune

　school food punishment「in bloom」