『8月第3週~動き出したメタゲーム~』

 フェアリー、むかつき、Scapeshift、赤昇天・・・こういった一線級のデッキが複数個出揃い、さらにRDWの形も大体定まったことで、それらは互いの存在を意識し、やがては相食む宿命を負う。

 そう、それこそがメタゲーム。はっきりいって今までの過程はスタートラインに並ぶためのものに過ぎない。登場人物は出揃った、さてそこからどのような物語が生まれるのか。神の視点で予測し、ほんの一歩分だけ先を行かなければならない。

 何故一歩分だけなのか?周りに合わせればメインストリームに飲み込まれる。かといって二歩先に行きすぎれば裏の裏は表で自爆するからだ。

 空想上の箱庭の中で人間の合理的な選択を仮定し、その傾向が数値的に算出できたとき、その資料を基にしてはじめてデッキ選択は『メタ的に正当化』される。

 ここからはよりストイックに『選択しうるデッキ』のみを峻別し、またそれに合わせたサイドボードを構築していく作業になる。さらにそれすらも予測のうちとなり、カードが次々と入れ替わり、それらは加速度を増し・・・

 メタゲームが、動き出す。


11:Faeries改
12:UW Solutions
13:URg Ascension
14:Dredge(UB/UGb)



◎『Faeries』(改)
公式のあんちゃんの記事(http://mtg-jp.com/reading/decks/006746/)より。
4《苦花/Bitterblossom(MOR)》
4《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite(LRW)》
3《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》
4《霧縛りの徒党/Mistbind Clique(LRW)》
3《祖先の幻視/Ancestral Vision(TSP)》
3《見栄え損ない/Disfigure(ZEN)》
4《マナ漏出/Mana Leak(M11)》
3《謎めいた命令/Cryptic Command(LRW)》
2《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》
2《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》
2《広がりゆく海/Spreading Seas(ZEN)》
4《人里離れた谷間/Secluded Glen(LRW)》
4《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit(WWK)》
4《変わり谷/Mutavault(MOR)》
3《地底の大河/Underground River(10E)》
2《沈んだ廃墟/Sunken Ruins(SHM)》
2《涙の川/River of Tears(FUT)》
5《島/Island(M11)》
2《地盤の際/Tectonic Edge(WWK)》

2《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》
3《強迫/Duress(M11)》
1《見栄え損ない/Disfigure(ZEN)》
3《破滅の刃/Doom Blade(M11)》
3《消耗の蒸気/Consuming Vapors(ROE)》
2《広がりゆく海/Spreading Seas(ZEN)》
1《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren(M11)》

 他のデッキが進化するのと同様、フェアリーもまた環境に合わせてスタイルを変える。メタゲームに合わせてチューンする。一強時代が終わりを告げたとはいえ、まだまだ一線級のデッキパワーは保持している。

 大きな特徴は『4枚目の霧縛り』『土地26で地盤の際』そして『広がりゆく海の採用』だろう。いずれもその目論むところは明白で、《罰する火/Punishing Fire(ZEN)》コンボの克服にある。

 メタゲームの中で大雑把にいって4分の1は罰する火デッキと考えられるので、フェアリー側はそれを意識したカード選択を強いられる。他にもメインに《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》を入れたタイプや、サイドに《虚空の力線/Leyline of the Void(M11)》まで積んだタイプもあるとか。

 また、『思考囲いが2枚に減量』『タール孔4枚』も目を引くが、特に同型戦においては苦花とタール孔のせいでライフレースがシビアになりがちなことに鑑みると英断と言えるのかもしれない。

 あんちゃんレベルになってようやく辿り着けた境地だから、他のレシピを見れば囲いが4だったりすることもあるだろう。

 なお上記のものは厳密には8月3週のデッキリストではないが、見た目で変化の乏しいフェアリーのリストをそう何度も書いてもしょうがないのでここでまとめておく。


◎『UW Solutions』
『神様へのブラフ』より。
4《運命の大立者/Figure of Destiny(EVE)》
3《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
4《翻弄する魔道士/Meddling Mage(ARB)》
3《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain(LRW)》
4《幽体の行列/Spectral Procession(SHM)》
3《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》
1《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos(ALA)》
3《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage(EVE)》
3《流刑への道/Path to Exile(CON)》
3《マナ漏出/Mana Leak(M11)》
3《清浄の名誉/Honor of the Pure(M11)》
2《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(M11)》
4《天界の列柱/Celestial Colonnade(WWK)》
4《秘教の門/Mystic Gate(SHM)》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress(M11)》
1《アダーカー荒原/Adarkar Wastes(10E)》
1《島/Island(M11)》
8《平地/Plains(M11)》
2《風立ての高地/Windbrisk Heights(LRW)》

3《テューンの戦僧/War Priest of Thune(M11)》
4《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist(ALA)》
2《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks(SHM)》
1《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
3《否認/Negate(M11)》
2《誘惑蒔き/Sower of Temptation(LRW)》

 『むかつき』『RDW』『フェアリー』というメタ上位三者を意識したソリューション系デッキ。構造上罰する火コンボに弱いが一応ブレンタン+メドラーでケアできる。

 フェアリーとRDWに強い白系ビートはむかつきコンボと罰する火が環境に存在する時点で何らかの工夫を迫られており、そのヴァリエイションの一つがこの形であると言えよう。

 打点の低さとソリューションでキーカード頼み故の信頼性の低さがネックだが、きちんとメタゲームに合わせた構築ができれば文字通り解答たりえる。もっとも、日本勢で使用者はいないようだが。


◎『URg Ascension』
『神様へのブラフ』より。
4《紅蓮術士の昇天/Pyromancer Ascension(ZEN)》
4《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》
4《思案/Ponder(M10)》
4《定業/Preordain(M11)》
4《稲妻/Lightning Bolt(M10)》
4《罰する火/Punishing Fire(ZEN)》
4《マナ漏出/Mana Leak(M11)》
4《魔力変/Manamorphose(SHM)》
4《謎めいた命令/Cryptic Command(LRW)》
2《時間のねじれ/Time Warp(M10)》
4《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows(FUT)》
4《沸騰する小湖/Scalding Tarn(ZEN)》
4《霧深い雨林/Misty Rainforest(ZEN)》
5《島/Island(M11)》
1《森/Forest(ZEN)》
1《山/Mountain(M11)》
3《滝の断崖/Cascade Bluffs(EVE)》

1《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》
1《クローサの掌握/Krosan Grip(TSP)》
1《古えの遺恨/Ancient Grudge(TSP)》
3《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》
3《否認/Negate(M11)》
2《火山の流弾/Volcanic Fallout(CON)》
2《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》
2《誘惑蒔き/Sower of Temptation(LRW)》

 UR Ascensionを進化させた形。今回の日本勢の最多デッキになると思われる。メインボードからのタルモゴイフの採用は特にRDWとの相性を大幅に向上させ、ついにはナベをして「お客さん」と言わしめるに至った。

 環境のサイドボードに《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》が溢れていることから、サイド後は難しいゲームになるが、昇天はプレイ時に誘発してしまえばカウンターが載ってしまうため、軽いスペルで高速で墓地を肥やせるこのデッキに対し、Relicだけでは対策として不十分なのが頼もしい。

 ただプレイング難度は相当高く、使いこなすにはかなり長い練習が要求される。筆者が回したこともないのに気まぐれで使ったらキングクリムゾンを発動する羽目になった(http://60486.diarynote.jp/201008260015213045/)のは記憶に新しい。

 それでも思案定業フル搭載の上にスペルが低マナ域に寄っているこのデッキの安定感は相当のものがあり、さらに使用者が一流のプロたちとくれば、誰かはトップ8に残るのではないか、と期待できる。


◎『Dredge』(UB/UGb)
(UB)
『神様へのブラフ』より。
4《面晶体のカニ/Hedron Crab(ZEN)》
4《エピティアの賢者/Sage of Epityr(TSP)》
4《バザールの大魔術師/Magus of the Bazaar(PLC)》
4《秘本掃き/Tome Scour(M11)》
4《記憶の放流/Memory Sluice(SHM)》
4《ナルコメーバ/Narcomoeba(FUT)》
4《恐血鬼/Bloodghast(ZEN)》
4《黄泉からの橋/Bridge from Below(FUT)》
4《戦慄の復活/Dread Return(TSP)》
3《エメリアの盾、イオナ/Iona, Shield of Emeria(ZEN)》
3《変幻影魔/Phantasmagorian(PLC)》
1《ダクムーアの回収場/Dakmor Salvage(FUT)》
3《地底の大河/Underground River(10E)》
4《沸騰する小湖/Scalding Tarn(ZEN)》
4《霧深い雨林/Misty Rainforest(ZEN)》
6《島/Island(M11)》

 このデッキを『神様へのブラフ』でこのままの形で筆者が掲示したのが6月23日。それから約2ヶ月間、イカ彦がPT本番で使うかもしれないからと秘匿し続けてきた。

 しかし一人回しだけでは調整に限界がある。意を決して『Ultra-X』として晴れる屋の平日エクテンに最初に持ち込んだのが8月18日。成績は振るわなかったが、いくつかの課題も見つかり、やはり一線級のデッキとして調整の俎上にのぼることとなった。

 その動きは単純にして明快。T2かT3にイオナが釣れる。ただし運が良ければ。

 ドレッジといっても発掘能力を持つものは環境に《ダクムーアの回収場/Dakmor Salvage(FUT)》しかない。その本質は《面晶体のカニ/Hedron Crab(ZEN)》、あるいは《記憶の放流/Memory Sluice(SHM)》と《秘本掃き/Tome Scour(M11)》を連打することにより高速で自分のライブラリを削ることにある。

 《エピティアの賢者/Sage of Epityr(TSP)》というマニアックなカードをそれほどまでに早く見出せたのは、スタンダード時代にこのデッキの亜種を使ったことがあるからに他ならない。そして、エピティアはこのデッキになくてはならないキーパーツなのである。

 もちろんこういったデッキの性質上マリガントラブルは避けられないが、環境最速のコンボデッキであることは間違いない。

(UGb)
『神様へのブラフ』より。
4《面晶体のカニ/Hedron Crab(ZEN)》
4《極楽鳥/Birds of Paradise(M11)》
4《飛び地の暗号術士/Enclave Cryptologist(ROE)》
4《獣相のシャーマン/Fauna Shaman(M11)》
3《マーフォークの物あさり/Merfolk Looter(M10)》
4《恐血鬼/Bloodghast(ZEN)》
4《復讐蔦/Vengevine(ROE)》
1《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger(TSP)》
1《バザールの大魔術師/Magus of the Bazaar(PLC)》
1《結ばれた奪い取り/Bonded Fetch(FUT)》
1《墓を掻き回すもの/Grave Scrabbler(FUT)》
1《変幻影魔/Phantasmagorian(PLC)》
1《エメリアの盾、イオナ/Iona, Shield of Emeria(ZEN)》
3《戦慄の復活/Dread Return(TSP)》
3《黄泉からの橋/Bridge from Below(FUT)》
4《霧深い雨林/Misty Rainforest(ZEN)》
4《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs(ZEN)》
1《つぶやき林/Murmuring Bosk(MOR)》
1《ドライアドの東屋/Dryad Arbor(FUT)》
4《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast(10E)》
4《島/Island(M11)》
2《森/Forest(M11)》
1《沼/Swamp(M11)》

 また、スタンダードに似た構成のUGbバージョンも製作されたが、罰する火に弱く、加えてこのデッキがメタゲーム上に位置するポジションからして中途半端な速度では意味がないと考えられたので、このバージョンはお蔵入りとなった。

 スクリブレインジャーや墓を掻き回すものなどツールボックス特有の楽しいギミックも詰まっているのだが、やや動きがスタンダードレベルな感は否めない。

            ◇

 『8月第4週~最終調整、そして・・・~』

 ほとんどのプロたちがURg昇天に手ごたえを感じる中、イカ彦とそして新たに『神様へのブラフ』のメンバーに加わったらっしゅは、自ら乗るデッキを決めかねていた。

 8月第3週の段階なら『むかつきコンボ』で問題はなかった。しかしこの段階に至ってMOでM11が解禁となり、MO上での調整が進んでくると、先に述べたようにVSむかつきのマッチアップ研究が飛躍的に進んでしまったのだ。

 もはやむかつきはそのメインボードでの優位性をすら維持できているか怪しい。いやメインボードはまだ有利にしても、サイド後はとにかく苦戦を強いられるだろう。

 かといって、新環境なのに「あえて」フェアリーに乗ることがプロレベルの選択か?と問われれば・・・あんちゃんほどのマニアになればそれはもはや「生き様」にまで昇華されているから選択に後悔はないかもしれないが・・・是とは答えにくい。

 やはり環境一発目というのはメタゲームが予想しづらく、デッキ選択が極めて難しい。ましてそれがプロツアーとなれば、その選択にかかる重圧は計り知れない。

 しかし、既に猶予はない。彼らは彼らなりの論理と矜持をもって、己の相棒を(少なくとも二択には)絞ったのだった。

15:Dredge改
16:Doran改
17:Merfolk



◎『Dredge』(改)
『神様へのブラフ』より。
4《面晶体のカニ/Hedron Crab(ZEN)》
4《エピティアの賢者/Sage of Epityr(TSP)》
2《飛び地の暗号術士/Enclave Cryptologist(ROE)》
4《記憶の放流/Memory Sluice(SHM)》
4《秘本掃き/Tome Scour(M11)》
4《ナルコメーバ/Narcomoeba(FUT)》
4《恐血鬼/Bloodghast(ZEN)》
4《黄泉からの橋/Bridge from Below(FUT)》
4《戦慄の復活/Dread Return(TSP)》
3《エメリアの盾、イオナ/Iona, Shield of Emeria(ZEN)》
3《変幻影魔/Phantasmagorian(PLC)》
1《ダクムーアの回収場/Dakmor Salvage(FUT)》
1《つぶやき林/Murmuring Bosk(MOR)》
4《地底の大河/Underground River(10E)》
4《沸騰する小湖/Scalding Tarn(ZEN)》
4《霧深い雨林/Misty Rainforest(ZEN)》
1《宝石鉱山/Gemstone Mine(TSB)》
5《島/Island(M11)》

4《叫び大口/Shriekmaw(LRW)》
3《真髄の針/Pithing Needle(M10)》
2《計略縛り/Trickbind(TSP)》
2《呪文貫き/Spell Pierce(ZEN)》
1《拭い捨て/Wipe Away(TSP)》
1《乱動への突入/Into the Roil(ZEN)》
1《テラストドン/Terastodon(WWK)》
1《命運縫い/Fatestitcher(ALA)》

 イカ彦はこのデッキかフェアリーのどちらかに乗るだろう。

 何度か触れたようにこの環境は《罰する火/Punishing Fire(ZEN)》のせいでサイドには《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》が溢れている。

 しかし《虚空の力線/Leyline of the Void(M11)》はない。ほとんどない。であれば、メインボードさえ取れればサイドのどちらか1ゲームは《真髄の針/Pithing Needle(M10)》で刺すなどしてもぎ取れるだろう。そしてこのデッキはメインボード無双である。

 加えて、2ヶ月間にもわたる我らが一人回しの日々。

 ・・・無論このデッキに乗ることはすなわち、初日の5回戦がかなりギャンブルになることを意味する。出発前にトラブルに見舞われたこともあり(*2)堅実により多くのプロポイントが欲しいイカ彦の立場からすると賢い選択ではないかもしれないが。

 極めて個人的な希望を述べれば、できれば『神様へのブラフ』から誕生したこのデッキで優勝して欲しいと思う。


◎『Doran』(改)
晴れる屋水曜エクテン9/1(http://mtghareruyablog.blog108.fc2.com/blog-entry-155.html)より。
4《ツリーフォークの先触れ/Treefolk Harbinger(LRW)》
4《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》
4《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》
4《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower(LRW)》
4《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》
4《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》
2《強迫/Duress(M11)》
1《名も無き転置/Nameless Inversion(LRW)》
3《流刑への道/Path to Exile(CON)》
4《大渦の脈動/Maelstrom Pulse(ARB)》
2《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》
4《つぶやき林/Murmuring Bosk(MOR)》
4《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs(ZEN)》
4《霧深い雨林/Misty Rainforest(ZEN)》
1《湿地の干潟/Marsh Flats(ZEN)》
3《森/Forest(ZEN)》
1《沼/Swamp(M11)》
1《平地/Plains(M11)》
1《地平線の梢/Horizon Canopy(FUT)》
1《活発な野生林/Stirring Wildwood(WWK)》
3《樹上の村/Treetop Village(10E)》
1《ボジューカの沼/Bojuka Bog(WWK)》

2《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg(LRW)》
2《根絶/Extirpate(PLC)》
4《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks(SHM)》
2《強迫/Duress(M11)》
2《蔓延/Infest(ALA)》
3《不敬の命令/Profane Command(LRW)》

 一方、らっしゅが乗るのは(おそらく)ドラン。最初期に有力デッキとして注目されながら、その丸さが気に入られず長い間調整カテゴリから外れていたが、PT直前のこの時期になって再び脚光を浴びている。

 なんといっても昇天をはじめとする罰する火デッキに対して明確に強い。むかつきのようなコンボデッキに対しても大量のハンデスと重量ビートの既定路線は頼もしく、RDWにも総合的にはやや有利がつくだろう。

 フェアリーに対してやや不利なのは不安要素だが、混沌としたメタゲームでも戦い抜けるオールラウンダーたるデッキの性質が、環境一発目で何が出てくるかわからないという今回のPTには合っているように思われる。

 加えて、最低でも日本勢の昇天に対してアンチとなるという打算的な要素も若干あるのだろう。


◎『Merfolk』
Wizardsの英文記事(http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/boab/105)より。
2《呪い捕らえ/Cursecatcher(SHM)》
4《アトランティスの王/Lord of Atlantis(TSB)》
4《銀エラの達人/Silvergill Adept(LRW)》
4《石ころ川の旗騎士/Stonybrook Banneret(MOR)》
4《珊瑚兜の司令官/Coralhelm Commander(ROE)》
4《メロウの騎兵/Merrow Reejerey(LRW)》
4《航跡の打破者/Wake Thrasher(EVE)》
4《熟考漂い/Mulldrifter(LRW)》
2《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage(EVE)》
4《目覚ましヒバリ/Reveillark(MOR)》
4《古代の聖塔/Ancient Ziggurat(CON)》
4《ワンダーワインの分岐点/Wanderwine Hub(LRW)》
16《島/Island(M11)》

 メインボードはオールクリーチャーデッキ。MO上でもちょくちょくマーフォーク使用者はいるらしいし、もしかしたら今回の台風の目になるかも、とはらっしゅの弁。ということで最後に念のために紹介しておいた。

 なお、何枚か《変わり谷/Mutavault(MOR)》を入れた方がいいらしい。


 *2 今回、一部の参加者は出発直前に旅行会社の倒産により飛行機代が倍プッシュになるという笑えないトラブルに見舞われている。

            ◇

 『まとめ』

 メタゲームを解説する・・・とかいいながら、個々のデッキの紹介に終始してあまり解説になっていなかった。タイトルに適当につけた『動態的』に至っては完全なるタイトル詐欺であるといえよう。

 このままでは結局カバレッジを読む皆様も何が何やらということになりかねないので、ここで一ヶ月間プロたちの調整にわずかでも付き合った経験から筆者が感じ取った個人的なメタゲーム予想図を提示しておく。

 (太字は本稿で紹介したデッキである)

13% Faeries
13% UR(g) Ascension
11% RDW
11% Ad Grace
09% Scapeshift
08% Doran
06% UW lark
05% RG Vengevine
04% Teachings
03% Merfolk
02% Elves!
02% UGR Junk
02% Living End
02% UW Solutions
02% Dredge
07% Rogues
100% Total



 や、やめろ!石を投げるんじゃない!!

 「数字はどこから出てきたんだ」「なんか強そうな順で傾斜配分しただけだろ」そうだよ仕方ないだろ!海外勢がどんなデッキ調整してるのか知らないんだから!

 だから当たれば儲けものだと思って(誰も得しないけど)参考程度にとどめておいてほしい。そしてPTが始まったら、↑の予想がどのくらい外れていたか確認して、「メタゲームとかいって全くクソの役にも立たない妄想癖が」、と罵ってほしい。

 にしても、今回はメタゲーム予想が難しいと思う。「色んなデッキが10%前後ずついるだろう」というのが参加者同士で大雑把に一致していた見解だった。PTベルリンでElves!が跋扈したような、そんなわかりやすいメタゲームではないのだ。

 それで何でこういう予想になるかというと、プロツアーに出るのは十分に調整をして優勝するために参加するプロプレイヤーたち「だけではない」から。もちろん参加者は参加者なりの練習をするだろうが、プロと交流を持ってレベルの高い練習ができる人は限られている。

 だからプロとそういう人たちの認識にはズレがあるし、限られた情報で行う選択は最初から合理的な選択たりえないなんてことも起こりうる。

 MOが爆発的に広まってからはそういうズレは随分小さくなったと思うけど、それはそれでMOの情報に依存することを意味している。「Decks of the Week」は今回最も多く閲覧されたエクステンデッドの大会結果だろう。

 といって筆者はMOを導入していないので、こういった情報がPT参加者にどれくらい影響するか想像もつかない。

 とりあえず既に昇天のレシピもMOで出回っているようだし、フェアリーについては既知中の既知。だからこれらはデッキパワーもあって単純な確率論として選択されやすいと踏んだ。

 その他は正直わからない。海外勢も新しいデッキを組んでいるとは思うけどそれは知りえないし。

 さて、一応解説できなかったデッキについて簡単に触れておくと、

・「UW lark」はオーソドックスなヒバリに《前兆の壁/Wall of Omens(ROE)》が入ってる
・「RG Vengevine」はMOでちょっと流行ったアンチフェアリーの速攻(Haste)ビート、もちろん罰する火搭載
・「Teachings」はVivid Toastに神秘の指導を加えたこの環境では珍しいガチガチのコントロール(昇天はコンボ・コントロールだしね)

 こんなところだろうか。ついでに既に少し触れた日本勢のデッキ選択については、最多がURg昇天で、おそらく次点はDoranになるだろう。

            ◇

 さて、そろそろ一回戦が始まるようだ。

 優勝するのは誰で、どんなデッキだろうか?

 日本勢の活躍を祈りつつ、カバレッジを待つとしよう。

------------------------------

 Today’s tune

 初音ミク「マイラストグラヴィティ」

http://www.nicovideo.jp/watch/sm11535860

コメント

bun
2010年9月3日19:18

こんばんは!
マジで面白かったっす!
語彙が貧弱でビックリマーク乱発するしかない僕を許して下さい・・・。

nophoto
通りすがり
2010年9月3日20:50

通りすがり失礼します

記事のあまりのクオリティーの高さに脱帽し、思わずブックマークしてしまいました。

この時期のエクテンは渦中の人間以外若干蚊帳の外な感じが否めず、カバレッジをちょっと興奮気味に読むしかないです。そんなときにこの記事を見つけて、どうしてそのデッキ選択に至ったか、またそのデッキの完成までのいきさつなど非常にしかもドラマチックに書かれていて読むのに没頭してしまいました。公式サイトで掲載されているかのような記事の秀逸さです。

この記事の続き楽しみにしています。それでは通りすがりで失礼しました

まつがん
2010年9月3日21:59

>bun
ありがとうございます。何よりの賛辞です。

>通りすがり
今回はエクテンに精通していない人にもPTのカバレッジをより興味深く読んでもらえるようにと思って書いたので、そういって頂けると幸いです。続きを書く予定はなかったのですが、PTのカバレッジを読んで検討・答え合わせの(3)を書くのも面白いかもしれませんね。

katu0
katu0
2010年9月9日23:03

初めまして、
今更のコメントですが、とてもタメになりました。
リンクさせていただきました~

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索