ようやくRise of EldraziがMagic Onlineでリリースされた。MOは環境研究が日夜すさまじい速度で進んでいくので、それに比べるとリアル専門プレイヤーの俺が書くことなど説得力の欠片もない。
それでも今回真面目にROEドラフトのアーキタイプ考察を書こうと思ったのは、公式のコガモの記事のクオリティの高さに触発されたということもある。もちろんこの日記がそのレベルに達するなどと自惚れるつもりはない。ただ、俺のエンターテイナーとしての矜持に関わっているとでも言うべきか。
いや、動機など何でも良い。さて・・・
皆さん、RoEドラフトは楽しんでいるだろうか。
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プロプレイヤー斉藤友晴のtwitterをして「ここ数年で一番面白い」と言わしめたこの環境だが、確かにドラフトするたびに新たなアーキタイプが発見できる気になってくる。
同一エキスパンション×3のドラフトは大抵が一定のコモンのいわゆる「集めゲー」になってしまいがちだが、この環境はただ漫然と集めるだけでは強いデッキにならない。カード同士が生み出すシナジー、そしてそれらを組み込んだアーキタイプを、パックを開けて瞬時に何通りも思い浮かべることができるか。また、その完成形目指してブレずにピックし続けることができるか。
コモン1枚からいくつものアーキタイプが浮かぶようになると、1ピックごとに転換点が現れ、選択肢をつきつけてくる。その「選択の幅」こそが環境の面白さを規定する。RoEドラフトはその幅が極めて広いのだ。
コモンでダブルシンボルを要求する強力なカードはほんのわずかであり、簡単に三色の道が開ける。事故のリスクを避け、あえて二色に固執するのもいいだろう。だが、もし次のパックで違う色のゴッドレアを引いたら・・・?日和ってしまうかもしれない。ああ、さっき《予言のプリズム/Prophetic Prism(ROE)》をピックしていれば・・・一つ一つの小さな反省が次の成功のきっかけとなる。
・・・いつまで経っても本題にたどり着かない気がしてきたので、この段落は「RoEドラフト面白いよね~」と言うためだけのものだった、ということにしておこう。
オーケー、本題に入ろう。
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8人ドラフトで他の7人が知らないアーキタイプを自分だけ知っているということは、それだけでアドバンテージだ。極端な話、白好き7人と同じ卓に座ったら白はやらないだろう。その逆に、青嫌い7人と同じ卓に座ったら青をやる。
そして、「アーキタイプを知らないということは、そのアーキタイプでだけ有用なカードを嫌いであるに等しい」。彼らは結果的にそのカードをピックしない。それがあなたにとってどれだけ有益なピックになるかも知らずに。
もう一つ。この環境を何回かやればわかる通り、2マナ2/2のバニラに一見してほとんど価値はない。
ゼンディカーと違い、《ハリマーの波見張り/Halimar Wavewatch(ROE)》や《草茂る胸壁/Overgrown Battlement(ROE)》や《オーガの歩哨/Ogre Sentry(ROE)》、はたまた《孔の歩哨/Vent Sentinel(ROE)》《コジレックの捕食者/Kozilek’s Predator(ROE)》など、地上を固めるカードには事欠かない。となると低マナ生物は後半マナを注ぎ込んでフィニッシャーとなるレベルアップ生物であることが望ましい。あるいはせいぜい《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire(ROE)》《ゴブリンのトンネル掘り/Goblin Tunneler(ROE)》のようなシステムくらいだろう。
そうした当たり前の共通認識の結果、バニラだけでなく接触戦闘を前提としたオーラやジャイグロまでもが低い評価を受けているのが現状だ。
しかし、ここで俺はあることを思い出した。
アラーラ×3のドラフトで渡辺雄也や三田村和弥が好んでドラフトしていた(ような気がする)白緑ジャイグロというアーキタイプ。あれもバニラクリーチャーやジャイグロが安い当時の状況にあって奇跡のように成り立ち、高い勝率を上げていた(多分)。
それがこの環境にも適用できるとしたら。
白と緑のバニラ・ジャイグロ系カードの異常なまでの安さを利用した、電撃作戦。
バニラクリーチャーの反撃が、今まさに始まろうとしていた。
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言うまでもなく、このアーキタイプにおける核となるコモンは《オーラのナーリッド/Aura Gnarlid(ROE)》だろう。オーラやジャイグロをフル搭載するこのデッキにあっては3マナ圏の生物でありながら十分なフィニッシャー性能を有する。
環境初期、俺は緑のコモンでトップは《コジレックの捕食者/Kozilek’s Predator(ROE)》ではないかと思っていたが、現時点でのトップはこのナーリッドである(ついでにいうと捕食者は《野心の発動者/Wildheart Invoker(ROE)》《草茂る胸壁/Overgrown Battlement(ROE)》に次ぐ4番手に落ちてしまった)。したがってこのナーリッドを複数枚ピックすることはかなり難しいと思われる。
しかし、逆に言えばこのアーキタイプで点数が高いと呼べるコモンはこれくらいなのだ。
何せ除去をピックする必要がない。スペルはすべてオーラかジャイグロ。そのどちらもが大抵レベルアップ生物よりは安く流れてくる。
また、肝心のやつがタップできないからかやたらと点数が低い《コーの綱投げ/Kor Line-Slinger(ROE)》も、2/2をどんどん並べるこのアーキタイプではエンド前/メインで2回起動して相打ちを取らせないといういつもの環境のタッパーと遜色ない働きを見せる。強いていえばこのデッキの除去はこれだろう。こんなに安く除去が取れてしまっていいのか!サブシステムの一つである「防衛」持ちに対しても強いのが魅力だ。
そして生物は、2マナを頂点とするマナカーブさえ意識すれば何でも良い。もちろん《岸壁安息所の騎士/Knight of Cliffhaven(ROE)》が取れれば嬉しいが決して贅沢は言わない。《マキンディのグリフィン/Makindi Griffin(ROE)》《踏みつけの仔/Stomper Cub(ROE)》《短刀背のバジリスク/Daggerback Basilisk(ROE)》・・・そして《栄光の探求者/Glory Seeker(ROE)》さえもが、このデッキをキュッと引き締めてくれる優良コモンとなるのだ。
そう、バニラは最初から最強であり、レベルアップする必要のない存在。つまりはレベルアッパーの上位互換なのだ。
またバニラはエルドラージトークンなど並べる必要がない。マナカーブ通り展開すれば《ウラモグの破壊者/Ulamog’s Crusher(ROE)》が出る前に決着がつく。最強のエルドラージ(重いスペル)は《踏みつけの仔/Stomper Cub(ROE)》だ。つまりバニラはエルドラージの上位互換でもある。
青白レベルアップVS緑赤黒エルドラージという構図に殴りこみをかける、隠されたRoE第三のテーマ。
それが緑白バニラなのだ。
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・・・かような妄想を携えてホビステの公認ドラフトへ。参加者6-6-8の20人。俺は6人卓。
1-1 《家畜化/Domestication(ROE)》流して《オーラのナーリッド/Aura Gnarlid(ROE)》正直病気かと思う。
1-2 《岸壁安息所の騎士/Knight of Cliffhaven(ROE)》
1-3 緑と白が枯れてタッチも考慮し《悪性の強打/Virulent Swipe(ROE)》 上家と被ってるかも・・・
1-4 《暁輝きの発動者/Dawnglare Invoker(ROE)》
1-5 《短刀背のバジリスク/Daggerback Basilisk(ROE)》
1-6 《刺し込む光/Puncturing Light(ROE)》
1-7 《無傷の発現/Emerge Unscathed(ROE)》
2-1 取るものなくて《コジレックの捕食者/Kozilek’s Predator(ROE)》
2-2 《ドレイクの陰影/Drake Umbra(ROE)》あとは白が卓であまりやってなくて、緑は下家方面にいなくて生物かき集める。
3-1 《巣の侵略者/Nest Invader(ROE)》あと適当に。
2《踏みつけの仔/Stomper Cub(ROE)》
1《コジレックの捕食者/Kozilek’s Predator(ROE)》
3《マキンディのグリフィン/Makindi Griffin(ROE)》
1《暁輝きの発動者/Dawnglare Invoker(ROE)》
1《オーラのナーリッド/Aura Gnarlid(ROE)》
1《アーファの番犬/Affa Guard Hound(ROE)》
1《短刀背のバジリスク/Daggerback Basilisk(ROE)》
1《岸壁安息所の騎士/Knight of Cliffhaven(ROE)》
1《茨噛み付き/Bramblesnap(ROE)》
1《巣の侵略者/Nest Invader(ROE)》
1《栄光の探求者/Glory Seeker(ROE)》
1《ルーンの苦役者/Runed Servitor(ROE)》
1《コーの綱投げ/Kor Line-Slinger(ROE)》
1《刺し込む光/Puncturing Light(ROE)》
1《大群の力/Might of the Masses(ROE)》
1《餌食の復讐/Prey’s Vengeance(ROE)》
1《無傷の発現/Emerge Unscathed(ROE)》
2《ハイエナの陰影/Hyena Umbra(ROE)》
1《抑え難い餌食/Irresistible Prey(ROE)》
8《平地/Plains(ROE)》
8《森/Forest(ROE)》
1《進化する未開地/Evolving Wilds(ROE)》
完璧・・・
イッツ・ザ・バニラ。早いターンに《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin(ROE)》や《硫黄石の魔道士/Brimstone Mage(ROE)》出されたら二秒で投了する姿が容易に思い浮かぶ。だが、それでこそバニラ。バニラ可愛いよバニラ。
マナカーブも2マナ域から6-4-4-2、スペルはほぼ全て1マナとまさにテンポを体現した形と言えよう。《抑え難い餌食/Irresistible Prey(ROE)》はワンチャンス酔ってるかつ単体のシステムを殺せる・・・かもしれない。
フェッチ取れてるのに《ドレイクの陰影/Drake Umbra(ROE)》がサイドに落ちてるが、マナベースの安定を優先した。強いカードをタッチした三色と同じテンポで展開するのは馬鹿らしいし、このデッキは2+1や3+1で実質的に白白緑緑を要求しているからだ。だがこれくらい強くてデッキに合うカードなら入れてもいいとは思う。今回はスペル全部2マナ以下の美しさに目が眩んだ。
ともあれ、これだけ書いて負けてたら逆に面白すぎるけど3-0まで駆け抜ける!
◇
第一回戦 VS赤緑タッチ黒 2-0
一戦目 相手が後手土地2で止まって勝ち。
二戦目 《オーラのナーリッド/Aura Gnarlid(ROE)》+《ハイエナの陰影/Hyena Umbra(ROE)》が止まらずに勝ち。
第二回戦 VS緑白タッチ黒(上家) 2-0
一戦目 軽快にビートするも《弱者の消耗/Consume the Meek(ROE)》から《ペラッカのワーム/Pelakka Wurm(ROE)》出されてライフが安全圏へ。しかし《大群の力/Might of the Masses(ROE)》絡めて一気に12点削って勝ち。
二戦目 膠着して《遊牧の民の集合/Nomads’ Assembly(ROE)》撃たれたのでトランプル持ちで殴ると相手がジャイグロ警戒して数減らすブロックしてくれたので事なきを得て、あとは飛行で勝ち。
第三回戦 VS青赤(下家) 2-0
《家畜化/Domestication(ROE)》引かれませんように・・・
一戦目 相手が《空見張りの達人/Skywatcher Adept(ROE)》スタートからダメージレース挑んできたので《アーファの番犬/Affa Guard Hound(ROE)》でちょっとずらしてから2/2祭りで相手の土地が1ターン止まったのもありタッパー強くて勝ち。
二戦目 相手が《熱光線/Heat Ray(ROE)》こっちのエンドに打ったのでジャイグロでかわして飛行でクロック刻み、《アーファの番犬/Affa Guard Hound(ROE)》で《記憶の壁/Mnemonic Wall(ROE)》に回収された《熱光線/Heat Ray(ROE)》を再度シャクってあとは《護衛のゴーマゾア/Guard Gomazoa(ROE)》をタッパーで寝かし続けて勝ち。
◇
3-0して《復讐蔦/Vengevine(ROE)》ゲット。まあ正直最後以外相手のデッキがあまり強くなかったというのもあるが・・・
《アーファの番犬/Affa Guard Hound(ROE)》は今までどんなアーキタイプに入るんだろうこれと疑問に思っていたが、2/2バニラを守りつつ展開するのに丁度いいカードだった。これならジャイグロと違って《よろめきショック/Staggershock(ROE)》にもシャクられないし。このアーキタイプだと安くて取れるいいカード。
◇
「この環境は遅い」と誰かが言う。確かに序盤のマナをレベルアップや壁の展開、エルドラージトークンの生産に使ってしまうことは多い。
しかしそれが普通だとしたら、自分だけその半歩先を行けば出し抜ける。少なくとも「遅い」と思っている人はマリガン判断が緩くなったり、除去を撃つべき場面で余計なダメージをもらったりする。
カードの点数のズレ、アーキタイプ認識のズレ、ダメージレースのズレ・・・そういった避けようのない些細な食い違いは積み重なってやがて致命的なプレイングミスを生む。いわゆる「わからん殺し」というやつだ。確かにわからないなら避けようがない。だが、よちよち歩きを始めたばかりの赤子でないなら、無知もまた罪なのだ。このデッキはそうしたミスにつけこみ、一気に殴りきることができる。
《オーラのナーリッド/Aura Gnarlid(ROE)》が取れたら。あるいは《岸壁安息所の騎士/Knight of Cliffhaven(ROE)》は取れたが青にはいけそうになかったら。
このアーキタイプを「選択肢」として留保しておくだけで、7手目以降のピックが輝いて見えるはずである。
・・・ちなみに、8ドラにおいてはカットはなるべくしない方がいいと言われているが、下家にシグナルを出し終え、かつ自分のデッキを強化するカードがない場合は別だ。これを読んだあなたが少しでも《栄光の探求者/Glory Seeker(ROE)》をカットする気になってくれたのなら嬉しい。
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Today’s tune
GUMI「Marygold」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10772695
コメント
ん、EDってアニメの話?アニメ自体は見てないんだよね・・・
>D
いや、もう前提だから。
家畜化の点数が思ったほどでもないことを含めて1-1は普通にあり得る。ドランをエレメンタル火力より先にとってもいいよねってのとイメージにてる
ドランの例えはよくわからんけど、1-1はナーリッドや《敬慕される教師/Venerated Teacher(ROE)》のようなアーキタイプの核となる強コモンのその後のピックの期待値が一番高いしね。
まあゆうても以前《家畜化/Domestication(ROE)》で《静寂の守り手、リンヴァーラ/Linvala, Keeper of Silence(ROE)》パクられた時は心が折れそうになったけど・・・
あと、大群の力は確かに今のところ強さの割に安めですね。
低コストビートデッキではもちろん、落とし子ばらまき系のデッキでも
相当おかしい強さです。
ほとんど1マナの樫の力で、2枚引くとすごいところから即死がねらえます。
下手するとウラモグの破壊者やコジレックの職工より価値が高いかも。
まあ確かに家畜化はサイド後の対処されやすさはあるかな。けど「意外と万能でない」というだけで、青で貴重な除去であることに変わりはないと思う。
職工はともかくウラモグの破壊者は俺の中ではもともと点数が低いので比較対象としてはどうかな・・・
>極上えび天丼
その発想はなかった・・・EDと言われるとEnding Themeしか出てこないアニメ厨乙w
ねーよwwwww
いい加減にしろwwwww
リンクしとくんでよろしくです!
ていうかエレメンタル火力ってそんなに強かったっけ?w
>ファッカー
そう思うでしょ?これが意外と馬鹿にならないんだよ
>KAKAO
プロツアーで試してみなよ!w
>セリーヌ
どもっす!こっちからもリンクさせていただきました!
どちらもデメリットはもってるけど強力って事を言いたいんじゃない?
ただドランとナーリッドのどこをどう比べてるのかは分からん・・・。もしかしたらドランは銀えらの消し去りをすり抜けられる部分の突破力をナーリッドと比べたかったのかな?
それとも部族主体ドラフトの中でも弱めなツリーフォークという種族のドランdisってるだけかも・・・。
わからん。
まあ家畜化流して予言のプリズム取る俺はなにも言えんよ。
それは完全に病気だろw