INV-ODYブロック、それと7thが落ちた新エクステンデッド環境。誰もが手探りの状態で、調整しようにもまともなデッキすら作ることができず、無為に時間だけが過ぎていった。
もちろん前環境の知識はあったので、親和やZOOといったお定まりのビートダウンくらいは作ることができたが、これまでの経験からいって、エクテンを規定するのはコンボデッキのスピード、すなわちキルターンが3か4か、といったところにあるのは明白だったので、クリーチャーによるダメージ勝ちを目論むという性質上4キルという縛りから逃れられないビートダウン、そこから先に作ることにさほどの意味があるでもなく、必然的に俺の関心はストームやバブルハルクといったコンボデッキに向いていた。
そこまでわかっていながら何故調整が遅々として進まなかったのかと言えば、それは俺のデッキ構築力の無さに由来する。《硫黄孔/Sulfur Vent(INV)》や《ほくちの加工場/Tinder Farm(INV)》などの2マナ土地が姿を消した今、ストームはどのような形であるべきか。《入念な研究/Careful Study(ODY)》がなくなった代わりに《留まらぬ発想/Ideas Unbound(SOK)》・・・などという安易な代替によってまで、バブルハルクというコンセプトを堅持する価値があるのか。そのコンセプトの存在は確実にわかっているのに、どのようなレシピになるのか全く想像がつかない。ましてローウィンやアラーラといった最近のエキスパンションがそれらにどのような影響を及ぼすかなどもっての他。つまり新しい環境ゆえに、情報が足りなかった。
この時期にDeckCheck.netなるものの存在を知り、一気に目の前の道が開けたように思われた。実際、ストームやバブルハルクなどの固定パーツの多いコンボデッキについてはある程度の知識が得られたと思う。だがいずれにせよそれらは決定的ではなかった。レシピを見てわかったのは、自分で使用するに足るほど頑強なものではないということだけだった。
あと一ヶ月足らずで自らが使用するデッキを決め、サイドボード15枚を精選しなければならない・・・
この窮地を救ってくれたのは、おかしくなってしまった高橋・・・らっしゅであった。世界中のプレイヤーたちと広く交流を持つらっしゅは、手に入れた情報からいち早くプロツアーのメタゲームを考え、それに沿ったデッキをいくつも提示してくれたのだ。俺はようやくまともな調整に手をつけはじめた。
最初に目をつけたのは、赤バーンであった。
『Mono-R Burn』
4《ケルドの匪賊/Keldon Marauders(PLC)》
4《モグの狂信者/Mogg Fanatic(10E)》
4《火花の精霊/Spark Elemental(10E)》
4《溶岩の撃ち込み/Lava Spike(CHK)》
4《欠片の飛来/Shard Volley(MOR)》
4《裂け目の稲妻/Rift Bolt(TSP)》
4《火葬/Incinerate(10E)》
4《爆片破/Shrapnel Blast(MRD)》
4《硫黄の渦/Sulfuric Vortex(SCG)》
3《血の手の炎/Flames of the Blood Hand(BOK)》
11《山/Mountain(SHM)》
4《大焼炉/Great Furnace(MRD)》
4《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus(DST)》
2《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel(DST)》
調整する中で決して勝率が高いわけではなかったが、フェッチギルラン環境であることを考えるとそのメタゲーム上のポジションはかなりおいしい。また俺がはじめて参加したプロツアー、2006年のホノルルにて初日1-7というマゾ成績をたたき出したのもバーンだった。これも何かの宿業か・・・そう思って、俺は再び《溶岩の撃ち込み/Lava Spike(CHK)》を手に取ろうかとも考えた。だがこのデッキはある「壁」にぶつかってしまい、それをきっかけとして本体に火力を撃つ時でさえ俺の魂には一切闘志が灯らなくなってしまったのだった。
その次に選択肢に上がったのは、発掘であった。
『Dredge』
4《バザールの大魔術師/Magus of the Bazaar(PLC)》
4《留まらぬ発想/Ideas Unbound(SOK)》
3《ゴブリンの知識/Goblin Lore(10E)》
4《カラスの罪/Raven’s Crime(EVE)》
4《ゴルガリの墓トロール/Golgari Grave-Troll(RAV)》
4《臭い草のインプ/Stinkweed Imp(RAV)》
2《壌土からの生命/Life from the Loam(RAV)》
1《暗黒破/Darkblast(RAV)》
1《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath(TSB)》
1《川のケルピー/River Kelpie(SHM)》
1《炎の血族の盲信者/Flame-Kin Zealot(RAV)》
2《命運縫い/Fatestitcher(ALA)》
4《戦慄の復活/Dread Return(TSP)》
4《ナルコメーバ/Narcomoeba(FUT)》
4《黄泉からの橋/Bridge from Below(FUT)》
1《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide(PLC)》
4《金属モックス/Chrome Mox(MRD)》
4《汚染された三角州/Polluted Delta(ONS)》
2《溢れかえる岸辺/Flooded Strand(ONS)》
1《繁殖池/Breeding Pool(DIS)》
1《蒸気孔/Steam Vents(GPT)》
3《湿った墓/Watery Grave(RAV)》
1《島/Island(ALA)》
《朽ちゆくインプ/Putrid Imp(TOR)》《入念な研究/Careful Study(ODY)》《打開/Breakthrough(TOR)》etc...を失い、以前のコンセプトが完全に崩壊したように思われた発掘。そしてそれ故に、今やどのデッキもサイドボードにすら墓地対策を積んでいない。ということは最強の発掘デッキを組み上げれば、メインボードで勝利した上でサイド後も依然として五分以上という夢のようなデッキが完成し、プロツアー参加者たちをことごとく出し抜ける・・・そのような考えがあながち間違っていなかったことは、今でこそ海外のとあるコミュニティが発掘デッキを持ち込んでなかなかの好成績を残したことからも明らかだが、しかしこの時は、調整過程においてこのデッキもまた「壁」にぶつかってしまい、俺とゆうやんが徹夜で調整した発掘が彼らの辿りついた形と比べてまだまだ調整が足りていなかった点は否めないにしても、バーンと同様に砕け散ることとなった。
2つのデッキを葬り去った「壁」とは・・・このような結果に終わった今、もはや誰もが知っていることだろう。今回のエクステンデッド環境における最大の癌、エルフ親和である。
バーンや親和同様、基本ライフが20点なのが強みであり、また平均3キル、最速2キルという驚異のスピードは、前環境における発掘さながらのクソゲーを生み出す。少なくともバーンや親和といった自分のコンセプトしか考えていない一本調子なデッキでは、コンボデッキの究極形とも呼べるエルフ親和に勝てる道理がない。情熱思想理想思考気品優雅さ勤勉さ、そして何よりも速さが足りない。
このエルフ親和が流行るであろうとらっしゅから聞かされた時点で、俺の選択肢は2つに絞られたといっても過言ではない。そう、エルフ親和を使うか、エルフ親和をメタるか、の2つである。
だがエルフ親和をメタるのは容易なことではない。発掘のように墓地という特異なリソースを使用するわけでもない、パーマネント依存のコンボデッキであるとはいえ、《垣間見る自然/Glimpse of Nature(CHK)》と《ワイアウッドの共生虫/Wirewood Symbiote(SCG)》がもたらす圧倒的なリソースは、数枚の単体除去程度では抑えきることは難しいだろう。
それでもエルフ親和を自ら使用するのは躊躇われた。なんといってもマリガン判断とプレイングがとても難しいのだ。
そんな状況にあって、最後にらっしゅが提示したのは、《荒廃稲妻/Blightning(ALA)》ZOOであった。
『Blightning ZOO』
4《野生のナカティル/Wild Nacatl(ALA)》
4《密林の猿人/Kird Ape(9ED)》
2《運命の大立者/Figure of Destiny(EVE)》
1《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda(CHK)》
3《モグの狂信者/Mogg Fanatic(10E)》
4《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler(ALA)》
4《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》
3《ケルドの匪賊/Keldon Marauders(PLC)》
3《タール火/Tarfire(LRW)》
4《稲妻のらせん/Lightning Helix(RAV)》
4《部族の炎/Tribal Flames(TSB)》
3《荒廃稲妻/Blightning(ALA)》
4《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire(ONS)》
4《樹木茂る山麓/Wooded Foothills(ONS)》
4《吹きさらしの荒野/Windswept Heath(ONS)》
1《踏み鳴らされる地/Stomping Ground(GPT)》
1《聖なる鋳造所/Sacred Foundry(RAV)》
1《血の墓所/Blood Crypt(DIS)》
1《蒸気孔/Steam Vents(GPT)》
1《寺院の庭/Temple Garden(RAV)》
1《草むした墓/Overgrown Tomb(RAV)》
1《神無き祭殿/Godless Shrine(GPT)》
1《山/Mountain(SHM)》
今回ZOOが辿りついた妨害の形はハンデスであった。なんといってもコンボデッキが早すぎて、場に出てから対処あるいは3マナかけて土地を攻めるといった悠長な動きではとても間に合わないからだ。
一見してこれはいいコンセプトだなと思ったが、これも自ら使用するには至らなかった。ZOOは簡単なようでプレイングが難しいのだ。この時には既にプロツアー一週間前といった頃合であったから、練習もろくにしてないZOOとかで同型に勝てる気はしなかった。
そうしてあてもなくバーンと発掘、ZOOといった使う気もないデッキを回していたが、このままではどれを使っても負けることが明白であった。
そんな折、フォーラムでの調整にてあんちゃんが使っていた青単レベルブルー・・・いや、フェアリーと出会って、俺はそのデッキに一目ぼれしてしまったのだ。
『Mono-U Faerie』
4《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite(LRW)》
4《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》
4《誘惑蒔き/Sower of Temptation(LRW)》
3《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage(EVE)》
1《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror(CHK)》
4《呪文嵌め/Spell Snare(DIS)》
4《もみ消し/Stifle(SCG)》
4《祖先の幻視/Ancestral Vision(TSP)》
4《マナ漏出/Mana Leak(STH)》
2《賢人の消火/Sage’s Dousing(MOR)》
2《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles(5DN)》
18《冠雪の島/Snow-Covered Island(CSP)》
4《変わり谷/Mutavault(MOR)》
2《激浪の研究室/Riptide Laboratory(ONS)》
フェッチを廃し、ライフ20点を強みにするレベルブルー。そのコンセプトの美しさが、《誘惑蒔き/Sower of Temptation(LRW)》や《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage(EVE)》といったメインの特徴的なカード選択と相まって映える。
何より製作者はあんちゃん。そう、このベルリンのPTQで俺は、あんちゃんのGP神戸優勝レシピの75枚完コピであるフェアリーで権利をもぎとったのだった。この符号・・・!
こうしてPTもあと5日ばかりに迫った頃、俺はあんちゃんのフェアリーに再び魂を賭けることを決めたのだった。
②へ続く→
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Today’s tune
初音ミク「Auto Mushroom Forest feat. 初音ミク」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5087269
コメント
凄い期待してるよw