PWC-166th-
2008年8月30日 趣味 コメント (3)
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第○×章 越えるべき壁
1
目覚ましの音に跳ね起きて、いつもより遠い場所に置いた目覚まし時計のスイッチを切る。パソコンを立ち上げつつ、やっぱりもうちょっとだけ寝ようかなと睡魔の誘惑に駆られたところで、そういえば今日はPWCだったな、と思い直して、まつがんはデッキケースを手に取った。
シルバーバレット
『銀弾キスキン』・・・今回まつがんが魂を預けるべき相棒として選んだそれは、来る日本選手権オープン予選のために調整を重ね続けていたものだ。もっとも調整といっても名ばかりで、一人で仮想の敵相手に黙々と、これでもかとダメージを刻み続けるいわゆる『一人回し』を数え切れない回数こなしたというだけの話。完成度に不安がないと言えば嘘になる。そこで、たまには対人戦もこなして『魂』を磨き続けることが勝利の秘訣と信じて疑わないまつがんは、草の根随一のレベルの高い大会であるPWCを利用して、『魂』を磨くと同時にデッキのプレイテストも兼ねるという一石二鳥の作戦を思いついたのだった。
「勝てるといいけど・・・いや、勝てる」
そう言いつつデッキケースを開けてデッキを取り出し、シャッフルする。7枚の初手はいつもと同様、可もなく不可もなくといったところであったが、妄想によって4ターン棒立ちの対戦相手をタコ殴りにしたまつがんは、せっかく夜のうちに充填された気合のような物質がデッキから発散するのを恐れるかのように『一人回し』を一回でやめることにした。
「ひだまりスケッチ×365の9話を見てから行くか」
寝起きのアニメタイム。この瞬間こそまつがんにとっての至福であった。嫁である宮子を堪能した濃密な30分が過ぎ、テンションゲージもMAX。上機嫌でシャワーへと向かう。
「ほ〜しを〜まわ〜せ、せかいのまん〜なかで〜・・・♪」
カラオケボックスと化した風呂場の中でまつがんは、今日倒すべきライバルたち・・・あるいは彼らの使ってくる様々なデッキ・・・のことを考えた。だが、いずれにせよ全部に勝つ。そして優勝するのだ。弱気な考えは要らない。誰であろうと何であろうと、銀弾キスキンで屠る。何度も辿りついた結論であるが、その妥当性を確かめるかのように、まつがんはサビの高音を苦にもせず伸びやかに歌いきった。
すっきりした後はお気に入りの服を着て、パソコンの電源を切り、珍しくまだ寝ている同居人を起こすのもなんだから、と朝ごはんを食べずに家を出る。ipod shuffleから先ほど歌っていた曲が流れているのを聴きながら、まつがんは駅までの道のりを逸るように歩いていった。
2
まつがんが会場に着くと、まだ時間が早めらしく人はまばらだった。受付を済ませ、購入したホビステスリーブとデッキ登録用紙を受け取ると、周りに人がいない場所を探して会場前方の席に着いた。誰に見られるというわけでもないのに、カードを裏向きにしつつスリーブを詰め替える。レジスタンスたるまつがんの習性であった。
しばらくすると、ロキが挨拶しつつ近づいてきてまつがんの向かいの席に座り、言う。
「ペヤングが耳から離れません」
「ああ、ペヤングね。あれは確かにヤバイ」
相槌を打ち、数少ない初音ミク曲の理解者である彼のために、まつがんが先日購入した『Re:Package』を貸してあげる旨を伝えると、ロキは大いに喜んだ様子で礼を言った。
他にも集まってきた参加者たちの雑談の相手もそこそこにデッキリストを書き上げ、眺める。脳内では十分に検討したつもりだが、まだ満足していなかった。否、満足とは結果を出した先にだけあるのかもしれない。そう考えながらメインボード60枚、サイドボード15枚の確認を終え、よし、と小さく頷いた。
『Silver Bullet Kithkin』
4《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart(LRW)》
4《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
3《運命の大立者/Figure of Destiny(EVE)》
4《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain(LRW)》
4《皺だらけの主/Wizened Cenn(LRW)》
4《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》
4《幽体の行列/Spectral Procession(SHM)》
1《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger(LRW)》
4《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《損ない/Unmake(EVE)》
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
17《平地/Plains(SHM)》
4《ひなびた小村/Rustic Clachan(MOR)》
2《風立ての高地/Windbrisk Heights(LRW)》
1《地平線の梢/Horizon Canopy(FUT)》
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
4《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
3《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
2《解呪/Disenchant(TSB)》
2《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre(SHM)》
多くの主要パーツが4枚差しなのに対し、スペル部分後半から始まる1、1、1の嵐。まつがんが銀弾と呼ぶそれは、はじめはちょっとした気紛れだった。今では戦術であり、アイデンティティですらあるのかもしれない。縦のラインとか横のラインとかいう名状し難い理論に裏打ちされた、まつがんがおよそ合理的なデッキ構築というものを放棄した証であった。
であるからして、今回のこの構成をまつがん自身説明する術を持たなかった。それどころか、これは説明できるようなものであってはならないという風にさえ思える。非合理的な構築で何らかの非合理的な力が生まれるとするならば、そのメカニズムが説明できるはずがない。そう思いつつもまつがんは、そのこと自体が抱える矛盾には気づかないふりをした。
とりとめもない思考から脱すると、ちょっと騒がしくなってきたので、席を立って会場後方に歩き出す。すると端っこの方にやまけんを見つけて、そちらに向かった。
「お、遊ぼうよ」
まつがんを見るなりそう言って、やまけんはデッキを取り出した。断る理由もなく反対側の席に座り、じゃんけんで先手後手を決める。やまけんのデッキはフェアリーで、日本選手権本戦のために実験的に色々なパーツを試しているらしい。今日は《神秘の指導/Mystical Teachings(TSP)》を入れているようだが、最近スタンダードで流行っている赤単を相手にそのカードがどれだけの重みになるのか、もはや時間をかけて説得するのもまつがんには馬鹿らしく思えたので、一通りなじって、しかしデュエルではぼこぼこにしたりされたりしていた。
キスキン側が勝つ時は超圧倒的に勝つためにゲームにならない。フェアリー側が勝つ時はまだマシだが、まつがんのようなデッキ構成では一度不利になったら巻き返せないので、いずれにせよ展開が一方的になりすぎた。互いの飽きた空気を察したのか、
「そろそろペアリング発表されるかもよ」
とやまけんが言ってフリーゲームはお開きになり、二人とも席を立って、そろそろペアリングが張り出されるであろうホワイトボード付近へと足を向けた。
やまけんがどっかに行って、ホワイトボードの前でペアリング発表を待っているまつがんを目に留めて、KAKAOが話しかけてきた。
「よぉ、まつがん」
「よぅ、KAKAOじゃないか。割符は持ってきたのか?」
「割符って何だよw」
と怪訝な顔をしていたが、すぐに何だか思い当たったのか、鞄の中から一冊の本を出してまつがんに見せた。
「・・・どうやら本物のKAKAOのようだな」
「本物ってw まぁまつがんも持ってくると信じてたけどw」
とまつがんの取り出した全く同じタイトルの本を見ながら言う。
『"文学少女"と神に臨む作家<ロマンシエ>(下)』は今日発売のライトノベルで、『文学少女』シリーズの最終巻にあたる。フライングでゲットしていた二人は既に読み終わったのか互いに遠慮なく感想などを言い合った。
「ていうか俺もう四周したんだけど」
「ていうかななせやばくね?」
その有様を客観的に表現すると『キモイ』の一言であったが、そのやりとりもペアリングが発表されたことで強制終了した。
3
「一回戦目の相手は・・・知らない人か」
席につき、相手が来たところで名前を確認してよろしくお願いしますと挨拶する。ダイスロールでまつがんは後手となった。マリガンチェックで互いにマリガンなしというところまで確認して、開始の合図を待つ。
主催者であるナカジマさんの挨拶が入り、参加人数が117名、スイスドロー7回戦が告げられる。
「117人か・・・多いな」
思わず漏れた誰かの呟きに密かに同意しつつ、まつがんは初手のハンドを確認した。重鎮スタートの申し分ないハンド。あとは相手のデッキ次第だが・・・
「それでは一回戦目、始めてください!」
※残念ですがこのままでは真剣に日記が書き終わらないので仕方なく通常モードに戻ります※
第一回戦 VS親和エルフ 2−0
一戦目 後手で重鎮スタート。相手はレン地スタートだったのでマナタイス構えて完全者を弾く。サルタリー僧侶でクロック刻みつつ、皺とメドウグレインで盤面止めて勝ち。
In
4《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
Out
4《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
2《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
二戦目 メドウグレインにグリフィンガイドついて止まらなくて勝ち。
第二回戦 VSキスキン 2−0
一戦目 相手がメインアジャニだったけどコンバットがうまくなくて捌いて勝ち。
In
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
3《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
Out
2《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart(LRW)》
2《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
二戦目 《損ない/Unmake(EVE)》とか《忘却の輪/Oblivion Ring(LRW)》とかされまくったけどプレイングミスってくれたので勝ち。
第三回戦 VS緑白青ビッグマナ 2−1
一戦目 ラス食らった返しで雲山羊出せて、きらめく願いからのテフェリーの濠越えて殴りきる。
In
2《解呪/Disenchant(TSB)》
2《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
Out
2《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
二戦目 また願いからモート出されて、今度は微妙に削りきれずカメコロにハンマー持たれて負け。
三戦目 超ぶん回ってラス持たれてなくて勝ち。モートもトップデッキでディッチャしといた。
第四回戦 VSガルガヒバリ 2−0
一戦目 先手でぶん回って勝ち。
In
2《解呪/Disenchant(TSB)》
2《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre(SHM)》
Out
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger(LRW)》
二戦目 ラスをマナタイスして勝ち。
第五回戦 VSキスキン 0−2
一戦目 先手土地3ブレンタンプリーストトークン3体×2でキープ。相手が秘匿から皺スタートで押すが初手のスペル以外ろくなカード引けなくて秘匿2枚でまくられて負け。
In
3《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
2《解呪/Disenchant(TSB)》
Out
3《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
4《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
二戦目 相手だけタッパーと除去祭りで負け。ていうかこの構成だと同型はきつすぎるな。
第六回戦 VS緑黒ビッグマナ 0−2
一戦目 先手2ターン目に日和ってうねりで1ドローしたために1テンポ損して負け。トップ信じるべきだったか・・・
In
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
Out
2《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
1《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger(LRW)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
二戦目 相手ダブマリでこちら勇丸スタートの上北方行をマナタイスするが最後まで3マナ出なくて負け。
・
・
・
「ありがとうございました」
4連勝から2連敗でドロップにサインしたまつがんは、不甲斐ない自分への苛立ちを隠そうともせず、その怒りを一人回しへとぶつけた。まだ完璧じゃない。俺はまだ戦える。そう言い聞かせるように、ひたすら最強のキスキンの構成を考えていた。
優勝した猫先生へのインタビューを眩しいものでも見るかのような視線で眺めていると、ふと昨夜同居人とした会話を思い出した。
「ちょっと優勝してくるわ 優勝して俺は二次元に行く」
「じゃあ優勝できなかったら小説風だらだらMTGね」
もはや抵抗する術を持たないまつがんは帰ってからのことを考えて憂鬱な気分に浸りつつ静かに会場を後にするのだった・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
Today’s tune
初音ミク、鏡音リン「なつぐも〜On her way to his home〜」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4020565
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第○×章 越えるべき壁
1
目覚ましの音に跳ね起きて、いつもより遠い場所に置いた目覚まし時計のスイッチを切る。パソコンを立ち上げつつ、やっぱりもうちょっとだけ寝ようかなと睡魔の誘惑に駆られたところで、そういえば今日はPWCだったな、と思い直して、まつがんはデッキケースを手に取った。
シルバーバレット
『銀弾キスキン』・・・今回まつがんが魂を預けるべき相棒として選んだそれは、来る日本選手権オープン予選のために調整を重ね続けていたものだ。もっとも調整といっても名ばかりで、一人で仮想の敵相手に黙々と、これでもかとダメージを刻み続けるいわゆる『一人回し』を数え切れない回数こなしたというだけの話。完成度に不安がないと言えば嘘になる。そこで、たまには対人戦もこなして『魂』を磨き続けることが勝利の秘訣と信じて疑わないまつがんは、草の根随一のレベルの高い大会であるPWCを利用して、『魂』を磨くと同時にデッキのプレイテストも兼ねるという一石二鳥の作戦を思いついたのだった。
「勝てるといいけど・・・いや、勝てる」
そう言いつつデッキケースを開けてデッキを取り出し、シャッフルする。7枚の初手はいつもと同様、可もなく不可もなくといったところであったが、妄想によって4ターン棒立ちの対戦相手をタコ殴りにしたまつがんは、せっかく夜のうちに充填された気合のような物質がデッキから発散するのを恐れるかのように『一人回し』を一回でやめることにした。
「ひだまりスケッチ×365の9話を見てから行くか」
寝起きのアニメタイム。この瞬間こそまつがんにとっての至福であった。嫁である宮子を堪能した濃密な30分が過ぎ、テンションゲージもMAX。上機嫌でシャワーへと向かう。
「ほ〜しを〜まわ〜せ、せかいのまん〜なかで〜・・・♪」
カラオケボックスと化した風呂場の中でまつがんは、今日倒すべきライバルたち・・・あるいは彼らの使ってくる様々なデッキ・・・のことを考えた。だが、いずれにせよ全部に勝つ。そして優勝するのだ。弱気な考えは要らない。誰であろうと何であろうと、銀弾キスキンで屠る。何度も辿りついた結論であるが、その妥当性を確かめるかのように、まつがんはサビの高音を苦にもせず伸びやかに歌いきった。
すっきりした後はお気に入りの服を着て、パソコンの電源を切り、珍しくまだ寝ている同居人を起こすのもなんだから、と朝ごはんを食べずに家を出る。ipod shuffleから先ほど歌っていた曲が流れているのを聴きながら、まつがんは駅までの道のりを逸るように歩いていった。
2
まつがんが会場に着くと、まだ時間が早めらしく人はまばらだった。受付を済ませ、購入したホビステスリーブとデッキ登録用紙を受け取ると、周りに人がいない場所を探して会場前方の席に着いた。誰に見られるというわけでもないのに、カードを裏向きにしつつスリーブを詰め替える。レジスタンスたるまつがんの習性であった。
しばらくすると、ロキが挨拶しつつ近づいてきてまつがんの向かいの席に座り、言う。
「ペヤングが耳から離れません」
「ああ、ペヤングね。あれは確かにヤバイ」
相槌を打ち、数少ない初音ミク曲の理解者である彼のために、まつがんが先日購入した『Re:Package』を貸してあげる旨を伝えると、ロキは大いに喜んだ様子で礼を言った。
他にも集まってきた参加者たちの雑談の相手もそこそこにデッキリストを書き上げ、眺める。脳内では十分に検討したつもりだが、まだ満足していなかった。否、満足とは結果を出した先にだけあるのかもしれない。そう考えながらメインボード60枚、サイドボード15枚の確認を終え、よし、と小さく頷いた。
『Silver Bullet Kithkin』
4《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart(LRW)》
4《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
3《運命の大立者/Figure of Destiny(EVE)》
4《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain(LRW)》
4《皺だらけの主/Wizened Cenn(LRW)》
4《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》
4《幽体の行列/Spectral Procession(SHM)》
1《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger(LRW)》
4《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《損ない/Unmake(EVE)》
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
17《平地/Plains(SHM)》
4《ひなびた小村/Rustic Clachan(MOR)》
2《風立ての高地/Windbrisk Heights(LRW)》
1《地平線の梢/Horizon Canopy(FUT)》
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
4《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
3《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
2《解呪/Disenchant(TSB)》
2《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre(SHM)》
多くの主要パーツが4枚差しなのに対し、スペル部分後半から始まる1、1、1の嵐。まつがんが銀弾と呼ぶそれは、はじめはちょっとした気紛れだった。今では戦術であり、アイデンティティですらあるのかもしれない。縦のラインとか横のラインとかいう名状し難い理論に裏打ちされた、まつがんがおよそ合理的なデッキ構築というものを放棄した証であった。
であるからして、今回のこの構成をまつがん自身説明する術を持たなかった。それどころか、これは説明できるようなものであってはならないという風にさえ思える。非合理的な構築で何らかの非合理的な力が生まれるとするならば、そのメカニズムが説明できるはずがない。そう思いつつもまつがんは、そのこと自体が抱える矛盾には気づかないふりをした。
とりとめもない思考から脱すると、ちょっと騒がしくなってきたので、席を立って会場後方に歩き出す。すると端っこの方にやまけんを見つけて、そちらに向かった。
「お、遊ぼうよ」
まつがんを見るなりそう言って、やまけんはデッキを取り出した。断る理由もなく反対側の席に座り、じゃんけんで先手後手を決める。やまけんのデッキはフェアリーで、日本選手権本戦のために実験的に色々なパーツを試しているらしい。今日は《神秘の指導/Mystical Teachings(TSP)》を入れているようだが、最近スタンダードで流行っている赤単を相手にそのカードがどれだけの重みになるのか、もはや時間をかけて説得するのもまつがんには馬鹿らしく思えたので、一通りなじって、しかしデュエルではぼこぼこにしたりされたりしていた。
キスキン側が勝つ時は超圧倒的に勝つためにゲームにならない。フェアリー側が勝つ時はまだマシだが、まつがんのようなデッキ構成では一度不利になったら巻き返せないので、いずれにせよ展開が一方的になりすぎた。互いの飽きた空気を察したのか、
「そろそろペアリング発表されるかもよ」
とやまけんが言ってフリーゲームはお開きになり、二人とも席を立って、そろそろペアリングが張り出されるであろうホワイトボード付近へと足を向けた。
やまけんがどっかに行って、ホワイトボードの前でペアリング発表を待っているまつがんを目に留めて、KAKAOが話しかけてきた。
「よぉ、まつがん」
「よぅ、KAKAOじゃないか。割符は持ってきたのか?」
「割符って何だよw」
と怪訝な顔をしていたが、すぐに何だか思い当たったのか、鞄の中から一冊の本を出してまつがんに見せた。
「・・・どうやら本物のKAKAOのようだな」
「本物ってw まぁまつがんも持ってくると信じてたけどw」
とまつがんの取り出した全く同じタイトルの本を見ながら言う。
『"文学少女"と神に臨む作家<ロマンシエ>(下)』は今日発売のライトノベルで、『文学少女』シリーズの最終巻にあたる。フライングでゲットしていた二人は既に読み終わったのか互いに遠慮なく感想などを言い合った。
「ていうか俺もう四周したんだけど」
「ていうかななせやばくね?」
その有様を客観的に表現すると『キモイ』の一言であったが、そのやりとりもペアリングが発表されたことで強制終了した。
3
「一回戦目の相手は・・・知らない人か」
席につき、相手が来たところで名前を確認してよろしくお願いしますと挨拶する。ダイスロールでまつがんは後手となった。マリガンチェックで互いにマリガンなしというところまで確認して、開始の合図を待つ。
主催者であるナカジマさんの挨拶が入り、参加人数が117名、スイスドロー7回戦が告げられる。
「117人か・・・多いな」
思わず漏れた誰かの呟きに密かに同意しつつ、まつがんは初手のハンドを確認した。重鎮スタートの申し分ないハンド。あとは相手のデッキ次第だが・・・
「それでは一回戦目、始めてください!」
※残念ですがこのままでは真剣に日記が書き終わらないので仕方なく通常モードに戻ります※
第一回戦 VS親和エルフ 2−0
一戦目 後手で重鎮スタート。相手はレン地スタートだったのでマナタイス構えて完全者を弾く。サルタリー僧侶でクロック刻みつつ、皺とメドウグレインで盤面止めて勝ち。
In
4《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
Out
4《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
2《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
二戦目 メドウグレインにグリフィンガイドついて止まらなくて勝ち。
第二回戦 VSキスキン 2−0
一戦目 相手がメインアジャニだったけどコンバットがうまくなくて捌いて勝ち。
In
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
3《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
Out
2《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart(LRW)》
2《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
二戦目 《損ない/Unmake(EVE)》とか《忘却の輪/Oblivion Ring(LRW)》とかされまくったけどプレイングミスってくれたので勝ち。
第三回戦 VS緑白青ビッグマナ 2−1
一戦目 ラス食らった返しで雲山羊出せて、きらめく願いからのテフェリーの濠越えて殴りきる。
In
2《解呪/Disenchant(TSB)》
2《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
Out
2《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
二戦目 また願いからモート出されて、今度は微妙に削りきれずカメコロにハンマー持たれて負け。
三戦目 超ぶん回ってラス持たれてなくて勝ち。モートもトップデッキでディッチャしといた。
第四回戦 VSガルガヒバリ 2−0
一戦目 先手でぶん回って勝ち。
In
2《解呪/Disenchant(TSB)》
2《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre(SHM)》
Out
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger(LRW)》
二戦目 ラスをマナタイスして勝ち。
第五回戦 VSキスキン 0−2
一戦目 先手土地3ブレンタンプリーストトークン3体×2でキープ。相手が秘匿から皺スタートで押すが初手のスペル以外ろくなカード引けなくて秘匿2枚でまくられて負け。
In
3《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
2《解呪/Disenchant(TSB)》
Out
3《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
4《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《補強/Fortify(TSP)》
1《鏡編み/Mirrorweave(SHM)》
二戦目 相手だけタッパーと除去祭りで負け。ていうかこの構成だと同型はきつすぎるな。
第六回戦 VS緑黒ビッグマナ 0−2
一戦目 先手2ターン目に日和ってうねりで1ドローしたために1テンポ損して負け。トップ信じるべきだったか・・・
In
4《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
Out
2《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender(LRW)》
1《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger(LRW)》
1《思考の糸のうねり/Surge of Thoughtweft(LRW)》
二戦目 相手ダブマリでこちら勇丸スタートの上北方行をマナタイスするが最後まで3マナ出なくて負け。
・
・
・
「ありがとうございました」
4連勝から2連敗でドロップにサインしたまつがんは、不甲斐ない自分への苛立ちを隠そうともせず、その怒りを一人回しへとぶつけた。まだ完璧じゃない。俺はまだ戦える。そう言い聞かせるように、ひたすら最強のキスキンの構成を考えていた。
優勝した猫先生へのインタビューを眩しいものでも見るかのような視線で眺めていると、ふと昨夜同居人とした会話を思い出した。
「ちょっと優勝してくるわ 優勝して俺は二次元に行く」
「じゃあ優勝できなかったら小説風だらだらMTGね」
もはや抵抗する術を持たないまつがんは帰ってからのことを考えて憂鬱な気分に浸りつつ静かに会場を後にするのだった・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
Today’s tune
初音ミク、鏡音リン「なつぐも〜On her way to his home〜」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4020565
コメント
「まさかの小説形式ktkr ww」
「ちょwwwオチwww」
学生の義務としてやらなければいけないであろう外国語の学習を放棄した青年は、朝から数えるともう5週はしているであろう「Re:Package」のアルバムを聴きながら一人だらだらMTGを読み忍び笑いを堪えていた・・・
Fin
リラホルン、神!
いつもよりもっと時間がかかった。二度とやらない
>名無し
リラホルンは神。