ISBN:4061825828 新書 西尾 維新 講談社 2008/03 ¥1,092














 最強のキスキンを作る。

 エルフ、フェアリー、ヒバリ、ビッグマナ、そして赤単が取り沙汰される中、明らかに単体のカードパワーで劣るキスキンをわざわざ使いたがるやつが俺以外にいるだろうか?いることはいるだろうが、絶対的に少数だろう。俺は王者のマジックに興味はない。俺は常にレジスタンスであり、欲するのは革命だ。

 だから、今回のデッキ選択にメタゲームは登場しない。原始の衝動、使いたいから使う。大体、今更環境やらメタゲームの話をしてみたところで、そんな話はみんな飽き飽きしているはずだ。キスキンだ、キスキンの話をしよう。

 モーニングタイドが入ったことでキスキンは大幅な強化を受け、メタゲームの一角にのし上がるかのように見えた。2月の頭、GPT千葉でライザが3byeを獲得した《キンズベイル国境警備隊/Kinsbaile Borderguard(MOR)》型はその可能性を十分に示唆するものであった。

 しかしそれも束の間、環境はエルフを中心に回り《名も無き転置/Nameless Inversion(LRW)》や《誘惑蒔き/Sower of Temptation(LRW)》がメインから積まれるビートダウン受難の時期が続く。《神の怒り/Wrath of God(10E)》や《滅び/Damnation(PLC)》などの大味な全体除去に強い国境警備隊だが、単体除去の増加、加えてジョイタイム相手は誘惑蒔きでパクられてガルガドンにサクられるなどのマゾプレイを受けてあえなく解雇に至った。

 まず除去をかいくぐりつつ直接戦闘を避け確実なクロックを刻むエースアタッカーが必要となった。《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》《セラの報復者/Serra Avenger(TSP)》両者の復権である。またクロックがある前提では相手のアクションを打ち消すカードが、それもなるべく低マナであると望ましい。《太陽の槍/Sunlance(PLC)》《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》は先撃ちと後出しの違いはあれど二本揃って真価を発揮するテンポ兵器である。しかしこれだけではまだコントロールの想像の範囲内のクロックにおさまっていると言える。勝つためにはもう一押し、予想もつかない角度で大打撃を与えるカードが必要だった。それが《ハリケーン/Hurricane(10E)》であり、ここまではGP一週間前に通過した部分である。

 だがグランプリ本戦に持ち込むともなれば少し話が変わってくる。グランプリには当然エルフもいればドランもいる、キスキン同型にだって当たるかもしれない。そんな相手にメインのハリケーンは正気の沙汰とは思えないし、対赤バーンにあっては自殺行為も甚だしい。しかしキスキンのデッキパワーはハリケーンの力を借りなければならないほど低いという結論は出ている。メインかサイドか・・・答えは出ないまま俺は静岡へ向かい、前日トライアルのデッキリストを埋めるまさにその瞬間も悩み続けていた。


 『だらだらMTG』
4《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart(LRW)》
4《ゴールドメドウの侵略者/Goldmeadow Harrier(LRW)》
3《主の戦術家/Cenn’s Tactician(MOR)》
4《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain(LRW)》
4《皺だらけの主/Wizened Cenn(LRW)》
4《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》
4《セラの報復者/Serra Avenger(TSP)》
3《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
1《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
1《栄光の頌歌/Glorious Anthem(10E)》
1《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
3《ハリケーン/Hurricane(10E)》
4《ひなびた小村/Rustic Clachan(MOR)》
3《地平線の梢/Horizon Canopy(FUT)》
3《低木林地/Brushland(10E)》
4《変わり谷/Mutavault(MOR)》
10《冠雪の平地/Snow-Covered Plains(CSP)》

3《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
2《忘却の輪/Oblivion Ring(LRW)》
1《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
3《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec(10E)》
3《薄れ馬/Wispmare(LRW)》
3《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》

 悩みながらも、静岡に来るまでにひそかに暖めていた形がこれである。

 キスキンにおける至上命題はもう一つあって、「メインの《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》の数」がそれにあたる。キスキンがクロックパーミの動きをしようとすると展開が遅れて大抵はクロックが足りなくなるのだが、ハマッた時の動きは圧巻である。しかし後半引いた時や2枚目以降の無駄ヅモっぷりは半端なく、これをメインに入れて不快な思いをするたびに1枚ずつ減らすという対処をしたところ1枚に落ち着いた。要はなくてもいいのである。

 あとは大体気にしないでいいレベルの電波であって、良くも悪くも実験的なレシピであると言わざるをえない。とりあえず直前トライアルはこの形で様子を見て、本戦までに最高の形を作ればいい。そう考えた。

 その油断。その甘い考えが、最強のキスキンへの道程を更なる迷走へ導くことになるとは。この時の俺には想像もつかなかった。


 直前トライアルCポッド。5−0まで・・・駆け抜けるッ!!

第一回戦 VS緑白黒ドラン            1−2
一戦目 先手ワンマリ土地1キープして土地引けず《カルシダーム/Calciderm(PLC)》とか《根絶/Extirpate(PLC)》とか撃ってくる相手に対しサンドバッグ状態という屈辱的な敗北を喫する。
In
1《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
2《忘却の輪/Oblivion Ring(LRW)》
3《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
Out
1《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
2《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
3《ハリケーン/Hurricane(10E)》
二戦目 相手ダブマリでこっちぶんぶん。
In
3《薄れ馬/Wispmare(LRW)》
Out
2《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
1《主の戦術家/Cenn’s Tactician(MOR)》
三戦目 おもむろに《獣群の呼び声/Call of the Herd(TSB)》を連打してくる相手に戸惑い、ダメージレースを読み間違えて負け。

 なんていうか言ってて空しくなってくるよ。駆け抜けるとか言って駆け抜けたことないじゃん。これっていわゆる死亡フラグみたいな。

 シングルエリミなので早くも次のポッドへエントリー。デッキリストを前に思考をめぐらせる。そうだ、道中たまたま行き会ったらっしゅオススメの形をここで試してみるというのも悪くない。


 『だらだらMTG』
4《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart(LRW)》
4《ゴールドメドウの侵略者/Goldmeadow Harrier(LRW)》
4《主の戦術家/Cenn’s Tactician(MOR)》
1《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers(TSB)》
4《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain(LRW)》
4《皺だらけの主/Wizened Cenn(LRW)》
4《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》
4《セラの報復者/Serra Avenger(TSP)》
4《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
3《栄光の頌歌/Glorious Anthem(10E)》
1《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
4《ひなびた小村/Rustic Clachan(MOR)》
3《低木林地/Brushland(10E)》
3《地平線の梢/Horizon Canopy(FUT)》
3《変わり谷/Mutavault(MOR)》
10《冠雪の平地/Snow-Covered Plains(CSP)》

3《ハリケーン/Hurricane(10E)》
3《薄れ馬/Wispmare(LRW)》
3《グリフィンの導き/Griffin Guide(TSP)》
1《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
3《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec(10E)》
1《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
1《忘却の輪/Oblivion Ring(LRW)》

 確かこんな形だったような。《栄光の頌歌/Glorious Anthem(10E)》等全体強化の採否も悩みどころである。貴重なスペルのスロットをこんなんに割いていいの?とかね。



 直前トライアルKポッド。5−0まで(ry

第一回戦 VS青黒フェアリー          2−0
一戦目 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》連打されたけど回避能力とアジャニが強すぎて勝ち。
In
3《薄れ馬/Wispmare(LRW)》
3《ハリケーン/Hurricane(10E)》
1《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
Out
1《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
3《栄光の頌歌/Glorious Anthem(10E)》
3《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
二戦目 覚えてないけど普通に勝ち。

第二回戦 VS青白無限ヒバリ         1−2
一戦目 早々とクロックを捌かれ負けた気になるも相手の引きがヌルすぎて普通に勝ちそうになる。が1ターン差で無限コンボが決まって負け。
In
3《ハリケーン/Hurricane(10E)》
2《薄れ馬/Wispmare(LRW)》
1《マナの税収/Mana Tithe(PLC)》
Out
1《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》
1《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers(TSB)》
2《太陽の槍/Sunlance(PLC)》
2《主の戦術家/Cenn’s Tactician(MOR)》
二戦目 《誘惑蒔き/Sower of Temptation(LRW)》とかで粘られるが《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》でちまちま削り最後は補強で押し込んで勝ち。
三戦目 あっさり無限ライフが決まって負け。

 最強のキスキンさえ完成すれば負ける気がしないのだが、中途半端に形をいじっては負ける最悪の流れ。このままでは本戦以前に気持ちが折れてしまう。果たして・・・

                     ?へ続く→

コメント

nophoto
某名古屋人
2008年3月14日0:00

 お久しぶりです。静岡の会場でキスキンの構成について質問した某名古屋人です。
 自分もキスキンをずっと調整していて、静岡にもキスキンで
参戦しました。静岡は初日速攻でドロップという結果におわりましたが、自分としてはキスキンデッキには民兵団の誇りが入っていた方が強いと思います。
まつがんさんが民平団の誇りを採用していないのはどういう理由からでしょうか?

まつがん
まつがん
2008年3月14日0:29

 入っても1枚でしょうし、わざわざ割くだけのスペースがなかったからです。対生物で腐りがちなこのカードをメインで積むのはリスクが高い上、サイドボードに積むほどのカードパワーもない。あとプレイングがやたら難しくなるから嫌いってのもありますが。

nophoto
某名古屋人
2008年3月14日3:14

 コメントありがとうございます。民平団の誇りは対生物では
腐る事もありますが、数の暴力で押し切れる事もあるので何ともいえないですね。
 これも、マナ税収同様、はまった時は強いカードなので人によって採用するか意見の分かれるカードだとは思います。

nophoto
らんらんらっしゅ
2008年3月14日21:55

入っても1枚とは非常に興味深いです。
ちなみに俺だったら投入しないんだけど、その理由としてはこのデッキ(2個目のレシピと大差なし)はキスキンとは違って1つの波ではなく2つの波を意識した所謂ハイブリット系だから。
もうちょっと噛み砕くと、序盤からの勢力を保ってその勢いで勝つキスキンデッキ(ライザの奴がいい例)においては序盤の数を意識した作りになり、誇りは少数であればシナジーも含めてデッキの動きを後押ししてくれる存在として採用の目処が立つ。
だけど、2個目のデッキはキスキンじゃない。序盤押し切れるだけの1マナ生物を取り揃えた上で、俺が想像していたメタ上ではマスもピンポイントもサイズ除去だったため、プロテクションとサイズパワーでリセットや本格的な妨害を視野に入れたホードデックに仕上げた。で、ソレの是非は置いておいて、誇りは序盤の勢いとシナジーを後押しするカード。使ってもらえば分かるんだけど、あまり数多くのクリーチャーで殴らないのが2個目のデッキ。除去環境ということを意識しても採用は難しいって意見。

まつがんが「キスキンの風」を言いたいがためにキスキンデッキとして紹介されているのが誤解の始まりと思われるが、それを言いたかったんだから仕方がない。俺だって5-0でかけぬける!!とかいいてーもん。

で、煽りはこれ位にして戻すけど、何枚投入するかによってこの話は違う方向に進まない?マツガンは「入っても1枚」と通常ゲームでの影響は極端に少ないと捉えているみたいだけど、名古屋の人は「採用していないのはどういう理由?」という質問から推測するにゲームに与える影響は大きいと考えていると思う。
この話を見て思ったけど、「ステロイドになんでファイヤーズ積まないんですか?」っていう質問と同じ類に思える。話題を整理してみてはどう?

まつがん
まつがん
2008年3月14日22:13

 つまり回避能力−アンセム型と民兵団−国境警備隊型とではコンセプトが違うから同列に論じても意味ないよってことね。整理するも何も結論出てるじゃんw

 入っても1枚ってのは、らっしゅの話に合わせるなら、このデッキにも1マナからの展開で押し勝つ波ってのは組み込まれてるわけだから、それにたまたま噛みあって勝つラッキーカード的な期待を込めて1枚採用も考えうるってだけの話。2枚以上は結局もう一つの波と噛み合わないカードなのにラッキーカード以上の働きを求めることになって割りに合わないってところかな。

nophoto
某名古屋人
2008年3月15日1:15

 >らっしゅさん
分かり易い解説ありがとうございます。
そうですね、まつがんさんのデッキ構成は数で押すタイプでは無いので、誇りは要らないですね。
自分の使っている8クルセイド型のキスキン単とは、違うコンセプトのデッキだという事が理解できました。

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